“漫画を進化させた” 「AKIRA」大友氏の仏漫画祭最高賞、現地大絶賛
AKIRAの作者として知られる大友克洋氏が、1月29日、ヨーロッパの国際漫画祭で、日本人として初めて最優秀賞を受賞した。
今回、本命と思われていたベルギーのヘルマン(Hermann) とイギリスのアラン・ムーア(Alan Moore)の二人を破って大友氏が大賞を受賞したというニュースは、フランス国内でも驚きと称賛で迎えられた。
ルモンド紙は「大友克洋、ついにアングレームの栄光をつかむ」というタイトルで同氏の経歴や作風に関する詳細な特集を組みこの偉業を讃えた。リベラシオン(フランスの日刊タブロイド紙)は、「やっと!」と、多くのファンが長年待ち望んだ末の受賞を興奮気味に伝えている。
◆「非凡なエンターテイナーであり勇敢な実験者」
アングレームはフランス中央西部、ボルドーの少し北に位置する町で、1974年から毎年1月末に国際漫画祭を開催している。コミック好きの町会議員の思いつきから始まったこの漫画祭は、今ではヨーロッパ最古で最大級とも言われ、世界中から漫画ファンが集まる一大イベントだ。
これまでにも水木しげるや浦沢直樹、鳥山明といった日本の漫画家が作品賞や特別賞を受賞したことはあったものの、大賞は大友氏が初めて。ヨーロッパ人以外で見ても5人目である。
同フェスティバルの責任者を10年務め、現在はキャスターマン(Casterman)出版社の芸術監督であるベノワ・ムシャール(Benôit Mouchart)氏は、「大友氏は非凡なエンターテイナーであると同時に勇敢な実験者。AKIRAは漫画が秘める大胆さを引き出し、漫画文化を一層進化させた作品で、世界の多くの人に影響を与えた。この受賞はとても素晴らしいことだ」、とYouTubeにコメントを投稿した。
◆AKIRAは特別な作品
大友氏の精巧なデッサンと型破りなストーリー展開はヨーロッパでも評価が高く、フランスに日本の漫画文化を浸透させた立役者として知られる。
メトロニュースは、「AKIRAは、日本の漫画がフランスに紹介され始めた初期の頃から多くの人に愛されてきた」と、その功績を認める。大友作品に感化されたフランス人の一人に、今は人気漫画家として活躍するバスティアン・ヴィヴェ(Bastien Vivès)氏がいる。受賞決定後のインタビューでも、10歳のときにテレビで見たダイジェスト版AKIRAについて「若者がヒーローで、暴力、薬物、性といったタブーや大人の問題に対峙するストーリーにショックを受けた」とその衝撃を語っている。
出版関連のニュース専門サイトbibliosは、この大賞を「特別な人しか得られない賞」とした上で、大友氏の受賞を祝福。AKIRAについて、「最初に世に出てからもうすぐ30年も経つにもかかわらず、全く古さを感じさせない作品」と評している。
20minutes(フランスの通勤者向けフリーペーパー)は、大友氏が大賞に選ばれたことを「いまや日本の漫画がフランス文化の中で大きな存在感を持つことを示している」と解説した。