「テスラに乗るのが恥ずかしい」オーナー続出、「言い訳グッズ」が大ヒット

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 かつてのステータス・シンボルはどこへ——。米電気自動車(EV)大手テスラの車は、今や大手を振って乗りにくい存在になってしまった。アメリカのオーナーらは、独自の「反イーロン・マスク」ステッカーを愛車に貼るなどし、マスク氏の信望者でないことを示そうと必死だ。

◆リベラル層から支持されていたが……
 イーロン・マスク氏は、かつて環境保護の立役者だった。環境に配慮した電気自動車メーカーのテスラを世界で最も価値のある自動車会社に成長させ、技術革新者としてもリベラル層から支持を集めていた。

 しかし、英ガーディアン紙は、「マスク氏がトランプ氏を支持し、さまざまな極右的な陰謀論を受け入れたことで、自身の車に恥ずかしさを感じる困惑したテスラオーナーたちを置き去りにした」と伝えている。

 資産4000億ドル以上を保有するともされる世界一の富豪であるマスク氏は、トランプ次期政権において、連邦政府職員の大量解雇を計画する「政府効率化省」の責任者に就任する見通しだ。トランプ氏はEVへの移行を「狂気」と呼び、購入補助金の撤廃を計画している。

 サンフランシスコの地元メディア『SFゲート』は、イーロン・マスク氏への批判が高まっている背景として、政治的な言動があると指摘している。7月にトランプ氏を標的とした銃撃事件が起きた直後に同氏への支持を表明し、その後、同氏の最有力支持者としての立場を確立した。

◆悩むオーナー「イーロン支持派と勘違いしないで」
 オンライン販売サイトのEtsy(エッツィー)に投稿されたあるレビューは、「私はテスラオーナーだが、トランプもイーロンも支持していない。両者を支持する異常な人々と同一視されたくない」と吐露する。

 だが、すでにテスラを購入したオーナーたちは、たやすく乗り換えることもできない。そこで彼らが苦肉の策として採用しているのが、「反イーロン・マスク」ステッカーの貼付だ。

 Etsyでは、「イーロンが狂っていると分かる前に(このテスラを)買った」と書かれたステッカーが特に人気で、これまでの販売総数は約1万5000枚に達している。

 SFゲートによると、同じ出品者がアマゾンで展開するステッカー販売は11月の大統領選挙翌日に過去最高の売り上げを記録。11月26日までの1ヶ月間で、2250枚以上が売れたという。

 ガーディアン紙も、テスラオーナーたちの間で反マスクステッカーの需要が急増していると報じている。テスラを所有していることを恥じるオーナーは多いようだ。

◆路上で意地悪されても納得してしまう…
 オーナーたちはジレンマに悩む。米オンラインメディアの『デイリー・ドット』は、所有者のミカ・ヒューストンさんによる動画を取り上げている。彼女は「環境に優しい電気自動車であることは感謝している」としつつ、「運転するのが恥ずかしい。ほかのドライバーから割り込まれたり無視されたりしたとき、『ああ、気持ちは分かります』と思ってしまう」と語る。

 動画に対し、別の元オーナーは、「イーロン・マスク氏との関連を断ち切るため、BMWのi4に乗り換えた。支払額は増えたが、それだけの価値がある」とコメントしている。

 最新の自動運転技術を搭載し、所有しているだけで誇らしく思えたテスラだが、立ち位置は変わりつつあるようだ。

Text by 青葉やまと