略語を使う人は返信してもらいにくい 不誠実に見られると米研究

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 日常的にメールやメッセージに絵文字や略字を使う人は多いだろう。略字を使うことで、相手との距離が縮まる効果があるように感じるはずだ。ところが、近い距離感や親しみやすさとは真逆の効果を生むことが、スタンフォード大学の研究結果で明らかになった。略字は時間の経過とともに、人間関係に影響を及ぼす可能性もあるという。

◆略字メッセージの返信率は低い
 テキストメッセージに略語ではなく、完全な単語を使用することで、個人がより誠実に見え、返信率が高まる可能性があることが研究で分かった。

 学術誌Journal of Experimental Psychology:Generalにて11月14日に掲載された研究によると、99.3%の人がタイピングの時間を理論的には節約できる略語を常用している。たとえば、「how are you?」を「hru?」に、「really」を「rly」に略したりする。

 スタンフォード大学で行動マーケティングの博士課程に在籍する研究著者のデイビッド・ファング氏は、省略されたメッセージは、送り手が労力を惜しんでいることを示し、人を不快にさせるかもしれないが、ゆったりして親しみやすいと思われ、親近感が増すかもしれないと考えていた。そこで、略語がコミュニケーションを促進するのか、それとも減少させるのかを解くため、実験を行った。

 5300人以上の被験者を対象に、さまざまな方法を用いて8つの実験を行った。対話アプリ「ディスコード」のグループチャットユーザーへの返信、オンライン・スピードデート実験の結果、37ヶ国にまたがるデートアプリ「ティンダー」ユーザーの会話履歴を分析した。また、略語を使っている人、使っていない人のどちらとテキストで会話をしたかを評価する実験も行われた。

 予備調査では、回答者の99%が略語を使い、84%は他人が略語を気にするとは思わないと回答した。

◆親しい間柄でもマイナス印象に
 分析の結果、略語が好きな人は、連絡先を交換してもらったり、返信してもらうことが少ないことが分かった。また、略語を使ったメッセージに対して被験者は、そうでないメッセージに比べて誠意を感じず、返信する気にならないと回答した。

 若者は略語を使う傾向にあるが、調査によって一貫性はないものの、彼らは略語を好まないことが分かった。

 ファング氏は「テキストの送信者は親密度が伝わるために略字を好むと考えていた。しかし、略字を使用する者に対してマイナスの考えを引き起こす結果に驚いた」と述べる。

 ティンダーの分析では、デート相手を口説こうとしている場合、ネット言葉(一般的な略語や頭字語を含む)が1%増えると、会話の長さが平均7%短くなった。「ティンダーで知り合った2人の会話が短ければ、人はそれほど強いつながりを築けていない可能性が想像できる」とファング氏は言う(タイム誌)。

 また、実験では、親しい人、あるいは遠い人とのメールの会話を想像してもらった。その結果、親しい間柄であっても、略語は誠意がないことを示すことが分かった。時間が経てば、それは人間関係に打撃を与えかねない。

 ファング氏は「下手なメールをしていると、既存の人間関係がうまく育たないかもしれない」と言う(タイム誌)。

 さらに、「付き合い始めや良い印象を与えたいときなど、より誠実に見せ、社会的な結びつきを強めたいときに略語は特に重要になる」と指摘する。誰が略語を受け取る側なのかを注意深く考えることを勧めている。

Text by 中沢弘子