過去最大の貿易赤字、今年中に黒字化も? 円安、原油安、米経済回復に海外紙注目
財務省は26日、2014年分、ならびに同年12月分の貿易統計を発表した(速報値)。モノの輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は、2014年、過去最大の12兆7813億円の赤字だった。一方で、12月分の輸出額に関しては、2008年10月以来の高水準となった。
◆2011年以来、4年連続での赤字
日本の貿易収支は1981年から2010年まで黒字が続いたが、2011年に赤字に転落。以降4年連続での赤字となった。赤字幅は年々拡大している。
2011年3月の東日本大震災の福島原発事故以来、エネルギー資源に乏しい日本は、停止した原発の代替として、化石燃料の輸入を増やすことを余儀なくされている。円安のせいでそれらはさらに高コストになっている、とフィナンシャル・タイムズ(FT)紙は説明する。
なかでも液化天然ガスの輸入量が伸びており、輸入額も大幅に増えたことが過去最大の赤字の一因となった。ブルームバーグはこの点に触れている。原油に関しては、国内での需要低迷と、原油価格の急落のために、輸入量・額ともに下がっている。
また、4月の消費税増税前の駆け込み需要で輸入が増加したことも、過去最大の貿易赤字の一因であるとブルームバーグは伝えている。
◆円安がいよいよ輸出企業に好影響?
一方、12月分だけに目を転じると、貿易収支はやはり赤字ではあるものの、その赤字幅は18ヶ月ぶりの低水準にまで減少した、とウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙は伝える。12月の貿易収支は6607億円の赤字で、30ヶ月連続での赤字となったが、前年同月からは半減したという。またFT紙によると、11月の赤字幅より26%減であるという。
赤字幅縮小の理由は、輸出額が予想を上回り急増したためだ、とブルームバーグは伝える。12月の輸出額は前年同月比12.9%の増加だった。これには円安による為替差益の影響が大きいが、輸出量そのものも3.9%増加している(WSJ紙)。なお輸入額は1.9%の増加だった。
これらのデータは、日本の円安政策がついに、輸出関連企業を助け始めていることのしるしである、とWSJ紙は宣言する。
4月の消費税増税で消費者が支出を控えたことから、日本は2014年に景気後退に陥ったが、輸出額の増加は日本経済をきっと支えるだろう、とブルームバーグは語る。輸出が上向きになったことで、2014年の9~12月期には成長が回復していそうである、とWSJ紙は語る。この速報値は2月16日に発表される。
◆工場などの海外移転が進み、輸出の円安効果は限定的との指摘も
ただしWSJ紙は、2014年の大部分において、円安は輸出関連企業にとってほとんど助けにならなかった、とも指摘している。その理由の一端は、多くの企業が、国内での高賃金と高齢化(による人手不足)対策として、オフショア化し、生産拠点などを海外に移転しているためである。
FT紙はこの問題に特に注目している。企業が何年にもわたって生産拠点の海外移転を進めたため、日本はもはや円安でも、輸出に強い追い風を受けないことをこの貿易統計が示している、と同紙は語る。日本はもはや輸出主導の経済ではない、というのだ。2014年7~9月期、輸出が日本のGDPに占めた割合は17.7%だったが、これはOECD加盟国の中でも特に低い水準だったという。
◆アメリカに引っ張られて日本経済も回復?
各メディアとも、12月分で輸出額が大きな伸びを見せた点については、アメリカの景気回復が主要因だと見なしている。アメリカに対する輸出額は前年同月比で23.7%増加した。輸出量でも9.4%の増加である。
この上昇が証明しているのは、アメリカの景気循環はその他の国々の先を行っており、アメリカは再度、世界経済の最後の頼みの綱の(活発な)消費者に変わりつつあるということだ、とFT紙は語る。
ブルームバーグでは野村証券のエコノミスト、野木森稔氏が「進行している円安と、アメリカのしっかりした経済成長が、輸出額の回復の原因です」「特に、連邦準備制度理事会が政策金利を引き上げる前の今年前半、輸出が日本経済を先導するでしょう」と語っている。また、「もしも原油価格が現在の水準近辺でとどまれば、4~6月期には、貿易収支はおそらく黒字に転じるでしょう」とも語っている。