OECD、日本の雇用改革路線を歓迎 行き過ぎた正社員の雇用維持から、格差解消へ
経済協力開発機構(OECD)は19日、報告書「日本の失職者レビュー:失職者の早期再就職に向けて」を発表した。。OECDは日本の失業対策について、おおむね高評価を下しつつも、「失職者がよりスムーズに再就職を果たせるよう一層の努力をする余地がある」としている。提言の概要は下記3点だ。
1.近年の雇用規制緩和を評価。すなわち、「行き過ぎた雇用維持」から、「雇用創出企業への労働者の円滑な移動を促進」。
2.退職手当・再就職支援が不十分な層(特に若年層、女性)に対し、適切な公的所得支援の検討。
3.再就職支援における官民連携。支援の相乗効果を高める。
安倍首相の雇用規制緩和政策を評価し、正規雇用と非正規雇用の格差解消が期待されている。
◆毎年1.4%の雇用者が失職……1年後の再就職率は48%
報告書によれば、日本では、リストラや倒産などが原因で、毎年平均1.4%の雇用者が職を失っているという。その後、1年以内に新しい職を見つけられた人は48%だった(2002~2013年の平均)。半数以上は職を見つけられなかったことになる。高年齢者、女性、教育水準の低い労働者の再就職率が特に低い。
再就職できた場合でも、所得は平均して2割減るとのことだ。4年経過後でも約15%減のままだという。
◆日本の低失業率は、非正規雇用者の犠牲が理由
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙「日本リアルタイム」によると、日本の失業率は、2013年の平均が4.0%であり、これはOECD加盟国全体の平均の7.9%と比べて低い。
ただし、報告書では、日本は非正規雇用者に損失を負わせて、景気の変化に柔軟に対応することで、低い失業率を維持している、とされているという。つまり、労働市場に流動性が乏しいことから生じる損失のほぼすべてを、雇用する側の企業ではなく、雇用者がこうむっているということである、とAFPは伝える。非正規雇用者のこうむる損失とは、雇用の安定に乏しいこと、スキル向上の機会が与えられないこと、失業手当が出ないことなどである。もちろん、賃金格差もあるだろう。
英インデペンデント紙の論説副委員を務めるヘイミッシュ・マクレー氏も、米WSJ紙に寄せたオピニオンで、日本は特別優遇される正規雇用者と、のけ者の非正規雇用者の格差社会として悪名高い、と指摘している。大企業の正規雇用者には高水準の社会的保護がある。一方、非正規雇用者は“何でもいいからできる仕事”に就かざるを得ない。英国以外のヨーロッパでも雇用規制が厳しいため、同様のパターンが見られるという。
◆日本版「フレキシキュリティー」で非正規雇用の格差解消を!
OECDは、日本は独自にアレンジした「フレキシキュリティー」を考案することで、労働者保護と経済活動力との、より良いバランスに到達する必要がある、と主張している。
「フレキシキュリティー」は、デンマーク発の労働政策で、「フレキシビリティー」と「セキュリティー」を合体させた造語だ。雇用する側には、解雇を行いやすくする、という「フレキシビリティー(柔軟性)」を与える一方で、雇用される側には、手厚い失業給付という「セキュリティー(保護)」を与える。その上で、失業者全員に対して、職業訓練や職のあっせんなどを行うというものだ。
これにより、雇用の流動性が高まり、必要な箇所に人員が流れ、経済成長に寄与すると同時に、新たな雇用も確保されるという。デンマーク政府公式サイトによると、デンマークでは毎年、民間雇用者の約25%が転職しているという。なおデンマークは、これらの政策の実施に、GDPの約1.5%を費やしているとのことだ。