米陰謀論サイト「インフォウォーズ」、風刺ニュースが買収 中傷被害者も支援
風刺記事で知られるアメリカのメディア「オニオン(The Onion)」の親会社が、陰謀論で知られるメディア「インフォウォーズ(InfoWars)」を落札した。物議を醸してきたメディアの行方とは。
◆ジョークのような真実
国内外の時事ネタを風刺した記事で知られるアメリカのデジタルメディア「オニオン」の親会社が、陰謀論者のアレックス・ジョーンズ(Alex Jones)が設立したメディア「インフォウォーズ」の運営会社であるフリー・スピーチ・システムズ(Free Speech Systems)を競売で落札した。1999年に設立されたインフォウォーズは、右翼的な陰謀論コンテンツや誤解を招くようなマーケティングメッセージを発信し続けてきた悪質なウェブサイト。たとえば、9.11の同時多発テロや2012年にコネチカット州ニュータウンで起きたサンディフック小学校銃乱射事件が自作自演のデマだったと主張するなど、事実に反する有害なコンテンツを発信してきた。
ジョーンズは、サンディフック小学校銃乱射事件で殺害された26名の犠牲者の家族を中傷したとして、裁判所から15億ドルの支払いを命じられ、2022年に破産保護を申請。賠償金を支払うことができず、ジョーンズはインフォウォーズを含む、自身の財産を競売にかけることを余儀なくされていた。
今回の落札にはサンディフック銃乱射事件の被害者家族も、賠償金の受け取りを見送るという形で、資金的なサポートに加わった。インフォウォーズの事実上の終焉(しゅうえん)は、一部の遺族にとっての「正義」を意味する。
◆インフォウォーズの終焉?
買収が最終化されるためには、裁判所の承認が必要となる。ジョーンズ自身、競売において不正操作が行われたとして対抗の姿勢を見せているほか、競売に負けたファースト・ユナイテッド・アメリカン・カンパニーも、(現金だけでなく)クレジットを含む入札額の積み上げは認められていないと主張。クリストファー・ロペス連邦破産裁判官も手続きの変更や、透明性の欠如、不正確な情報開示などといった問題があったとの懸念を示し、追加聴取を実施する意思を示した。
買収が成立すれば、ジョーンズのメディア企業に終止符が打たれることになるが、ジョーンズは抵抗を続けると強気の姿勢を見せている。一方、勝訴したサンディフックの犠牲者の家族も責任追求を続けるであろうとNPRは報じる。
買収されたインフォウォーズは、銃暴力の問題に取り組む非営利団体「エヴリタウン・フォー・ガン・セーフティー(Everytown for Gun Safety)」のスポンサーを受け、陰謀論者や右翼を風刺したり、銃暴力の防止を訴えるような教育的な情報を発信したりするサイトとして、1月に再スタートする予定(AP通信)。