『HUNTER×HUNTER』格闘ゲーム、豪で発売禁止に 当局が分類拒否

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 冨樫義博氏による日本の人気漫画『HUNTER×HUNTER』をベースにした2D対戦格闘ゲーム『HUNTER×HUNTER Nen×Impact』が、発売延期を経て、2025年の発売を見込んでいる。だが、オーストラリアでは実質的な発売禁止措置となった。

◆レーティング拒否、事実上の発売禁止に
 オーストラリアの政府機関である分類審査委員会は11月18日、同ゲームの年齢レーティングを拒否した

 分類審査委員会のウェブサイトは、今回の「分類拒否」判断について、ゲーム内容が「一般的に受け入れられる社会基準を超えている」と説明している。オーストラリアで最も厳格な成人向けレーティングである「R18+」および「X18+」区分でも許容できないとの判断となった。

 英ゲーマーズ・レーダーは、格付審査における分類拒否はすなわち、事実上の販売禁止措置を意味すると伝えている。

 ゲーム業界の専門メディアである米ポリゴンは分類拒否の具体的な理由について委員会に問い合わせたが、即座の回答は得られなかったとしている。

◆薬物依存や暴力描写を問題視か
 米スポーツ・イラストレイテッド誌のゲーム部門は、本作の発売禁止措置の理由について推測している。典型的な禁止理由をもとに判断すると、ゲーム内で薬物使用による能力の向上効果が示されている、性的暴力が描写されている、あるいは18歳未満と思われるキャラクターの性的描写が想定されるなどが考えられるという。

 同誌によると、ドイツのゲーム審査機関であるUSKは本作について、「死、いじめ、依存症の精神的ストレスを伴う描写」および「強い暴力表現」が含まれていると判断している。特に「依存症」の描写があることで、薬物依存に厳格なオーストラリアの審査基準に抵触した可能性があるという。ただし、禁止措置の正確な理由については「結論を待つ必要がある」と注意を添えている。

 ポリゴンは、漫画・アニメ版『HUNTER×HUNTER』について、子供向けコンテンツでありながら暴力的な描写を含み、特に敵役のヒソカが主人公のゴンやキルアなど若いキャラクターに対し、不適切な(性的な)執着を示す描写が見られると指摘する。

 ただし、こうした表現がゲーム版に引き継がれているかどうかは、現時点で確認されていない。

◆厳格な基準設けるオーストラリア
 オーストラリアは厳格な審査基準で知られる。スポーツ・イラストレイテッドによると、オーストラリアでは2013年に18歳以上向けのR18+分類が導入されて以降、事実上の発売禁止は減少した。しかし、現在も厳格なコンテンツ規制が続いており、薬物やセックスに関する表現が含まれるゲームは依然として発売禁止となる可能性があるという。

 本ゲームの開発・販売を手がけるArc System Worksが異議申し立てを行わない限り、オーストラリアでの発売は実現しない見込みだ。ただし、異議申し立ての手続きには長い時間と多額の費用が必要になる。

 ゲーマーズ・レーダーは、「ゲーム発売時までには、オーストラリアでの問題が解決され、皆が楽しめるよう願う」と所感を述べる。

 日本の感覚ではゲーム内の架空の事象として捉えられる描写でも、薬物使用が深刻な国ではセンシティブな問題になることがあるようだ。

Text by 青葉やまと