新聞規制をめぐるイギリスの政争-首相が規制に反対する背景とは?

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新聞規制をめぐる政争-首相が規制に反対する背景とは? 29 日、新聞の行き過ぎた取材を調査していたリブソン委員会が、2000 ページに及ぶ報告書を発表した。報告書の骨子は、新聞報道を監督する機関を法的に設置するべきであるという勧告である。これは、『ワールド・オブ・ニューズ紙』(昨夏廃刊)による盗聴スキャンダルを受けてのものだ。これまでも新聞社による自主規制機関はあったものの、報告書は、それが十分に機能していないと厳しく指摘している。
 キャメロン首相は、国による検閲を許す道につながるため、法規制は超えてはならない一線であるとして、この勧告に反対の立場をすでに表明した。一方、連立パートナーの自由民主党党首クレッグ副首相、および、野党労働党党首のミリバンド氏は、勧告に賛成の立場を取っている。なお同委員会は、上記のスキャンダルを受け、1 年 4 ヶ月前にキャメロン首相自らが設置したものであった。
 海外紙は、政界を二分している論争について詳報している。

 同勧告を受けた実際の法規制について、自由民主党と労働党が賛成の姿勢であり、与党保守党内にも多数の賛成者がいると分析されている。英ガーディアン紙は、実際、労働党党首のミリバンド氏が、遅くてとも来年 1 月までに、法規制に関する投票を下院に求めるだろうと報じている。同紙によると、キャメロン首相が議員の自主投票に任せると成立の可能性があるという。

 こうした動きに対し、盗聴被害を受けた家族は弁護士を通じ、首相の法規制反対は残念だと述べた。フィナンシャル・タイムズ紙によると、この事件は、誘拐された女児の携帯電話に『ワールド・オブ・ニューズ紙』が不正アクセスし、留守電メッセージを盗聴していたため、両親が女児の生存に望みをつないだという事件である。
ガーディアン紙も、勧告がよほどおかしくない限り実施すると首相が約束していた事実を批判的に取り上げている。

 なお、疑われていたキャメロン首相とマードック氏(『ワールド・オブ・ニューズ紙』を傘下におさめていた)の癒着については、リブソン委員会の報告書において証拠がないと判断された。ニューヨーク・タイムズ紙によると、この疑惑は、2010年にキャメロン氏が首相に就任する前後に、マードック氏がキャメロン氏を支持する見返りに、同氏が BSkyB(British Sky Broadcasting)を買収しやすい環境を保守党が整えるという取引があったのではないかというものであった。ただし、同紙は、取引とは言えないものの、政治家とマードック氏側に暗黙の了解があったとする報告書の見方を掲載している。

Text by NewSphere 編集部