米国人の関心はどのように移り変わっているのか 選挙年のトレンドを可視化
グーグルの検索データを活用し、2004〜2024年の選挙年におけるアメリカ人の関心事項をデータ化してまとめた「ウェーブ・オブ・インテレスト(Wave of Interest、以下WoI)」が公開。前回と今回の選挙戦でアメリカ人の意識はどう変化したのか。
◆グーグル検索の隠れたパターンを探る
WoIは、グーグルトレンドとデータビジュアリゼーションの企業、トゥルース&ビューティー(Truth & Beauty)の共同プロジェクトで、2004年から2024年までのアメリカにおけるグーグル検索の関心度から、近年の選挙におけるアメリカ人の関心と興味を明らかにするものだ。今回リリースされた2024年版は、2020年の選挙の際に発表された旧版に基づいている。
WoIのサイトでは、いくつかの政治的話題(トピック)に関するグーグルトレンドのデータを抽出し、可視化している。政治的トピックとは、現在アメリカで最も検索されている政治的概念、調査機関ピュー・リサーチ・センターの選挙調査から得られた話題、新たな課題を考慮し手動で追加された話題から構成される。
トゥルース&ビューティーは、データの可視化を専門とするドイツ人情報デザイナーのモーリッツ・ステファナー(Moritz Stefaner)の事業。グーグルや経済協力開発機構(OECD)、セールスフォースなどをクライアントに持つステファナーは、社会経済関連から文化に至るまで多様なデータを分析し、可視化によるわかりやすい発信に貢献してきた人物だ。
◆インフレへの関心が大幅増加
アメリカ全体で見ると、関心の増加が際立ったトピックについては、「インフレ」114%増、「年金保険」76%増、「財政赤字」39%増、「育児休暇」38%増、「エネルギー」35%増、「移民」33%増、「物価」33%増となっている。一方で、関心度が大幅に下がった項目としては、「アメリカの学費ローン」90%減、「失業」88%減、「人種差別」49%減、「アメリカ国債」47%減、「修正第2条(人民が武器を保有し携帯する権利を保障する、アメリカ合衆国憲法の条項)」45%減、「ファクトチェック」43%減、「労働組合」「銃規制」それぞれ42%減、「不況」30%減といった結果になっている。
一方、州ごとに見るとまた違った傾向が見られる。たとえば、中絶のトピックはアメリカ全体においての関心度は16%増となったが、今回の選挙で中絶規制に関する住民投票が行われた10州に含まれるネブラスカ州では40%増、アリゾナ州でも39%増、ミズーリ州でも29%増という結果になった。同様に避妊のトピックに関してもアメリカ全体での関心度は2%減だったものの、ミシシッピ州では32%増となった。中絶が法律で禁止されている同州においては、避妊の権利を守るための法案が提案されていた。
WoIのウェブサイトでは各年の月ごとの傾向も見ることができる。人種差別に対する関心度がピークとなった2020年6月は警察官によるジョージ・フロイド殺害を受け、ブラック・ライブズ・マターの大規模な抗議行動が起こった月だ。
グーグル検索のデータだけが、人々の関心事項ではないが、WoIはアメリカの民主主義の行方を見守る者たちにインサイトを与えてくれる重要なリソースだ。