高浜原発再稼働に一歩 グリーンピース“市民の懸念を無視”と規制委を批判

 17日、原子力規制委員会は、関西電力高浜原子力発電所の3、4号機について、再稼働のための事実上の合格証となる審査書案を了承した。原発推進の立場を取る安倍政権が、また一歩再稼動に近づいたと、海外メディアが報じている。

◆再稼動は時間の問題?
 海外メディアはいずれも、今回の発表が安倍自民党の大勝後に行われたと報道。「政府が高浜再稼動に成功すれば、原子力回帰への弾みがつくかどうかの、より分かりやすい指標となりそう(ウォール・ストリート・ジャーナル紙、以下WSJ)」、「福島の事故以来、停止していた原発のスイッチをいれるための、政府の意欲に弾みがつく(ブルームバーグ)」と述べ、原発推進派の安倍首相のもとで、再稼動が本格化すると見ている。

 原発停止後、液化天然ガスなどの輸入燃料にエネルギー資源を置き換えたことで、2013年に電力会社が払った燃料費は、2010年と比べて3.6兆円アップ。また、高浜原発を持つ関西電力は、その歳入の86%を発電から得ており、2014年3月期の純損益は970億円で、今年度のさらなる赤字は避けられないとみられる(ブルームバーグ)。

 原子力は「重要なベースロード電源」とする日本政府は、2018年までに48機ある原子炉のうちの25機を再稼働させるだろうと、ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスは予想している。

◆最終決定権は誰に?
 WSJは、規制委からの合格証が出ても、「だれが最後の決断をするのか」という問いへの答えはなく、再稼動への道はいまだ不確かだと述べる。規制委自体は、再稼動の決定はその権限外だと強調。地元の了解は必須だが、どの自治体が最終的に再稼動を決めるのかは明らかではないとWSJは述べる。

 福井県にある高浜原発の場合も、京都、滋賀の県知事が、両県も危険にさらされる可能性があるとし、再稼動に対して発言権を要求してきた。NTTデータ経営研究所の鈴木敦士氏は、「この問題にどの自治体が加わることが許されるのかという厳格な定義なしで、中央政府がこのような要望を無視することは難しい」とし、制度の問題点を指摘している。

◆規制委への不信
 WSJは、テレビ朝日が12月初めに行った世論調査に言及。44%の回答者が安倍首相を支持すると答えたが、58%はたとえ規制委が合格としても、原発再稼動には賛成しないと答えたと述べ、再稼動には依然不安を持つ国民が多いことを説明する。

 AFPは、福島の事故以来、日本人は非常にテクノロジーに懐疑的とし、「福島の事故は少なくとも部分的には人災で、骨抜きにされた監督者が、電力会社と政府の癒着を断ち切る努力を怠ったためだ」という批判もあると述べる。

 それを正すために立ち上げられた規制委が、その義務を怠っていると、環境保護団体のグリンピースは主張(AFP)。「深刻な事故が起これば、関西の人々と経済への大打撃となる。被ばくから地域の人々を守る効果ある緊急計画は存在しない」と声明を発表し、規制委が高浜の安全対策を承認したことは、市民の懸念を無視していると批判した(ブルームバーグ)。

Text by NewSphere 編集部