ユーザー大量離脱のX、台頭するブルースカイ つぶやき系SNS動向
アメリカ大統領選挙後、多くのユーザーがX(旧ツイッター)を離脱した。マスクによる買収後もXは弱体化することなく影響力を持ち続けているが、ブルースカイなどの競合もユーザー数を伸ばしている。
◆Xユーザー、離脱の理由
11月5日に行われた大統領選挙の翌日、イーロン・マスクが2022年にプラットフォームを買収して以来最も多くのユーザーがXを離脱した。一般ユーザーだけでなく、英紙ガーディアンや元CNNのアナウンサー、ドン・レモンなどのメディア関係者も離脱を表明。ガーディアンについては、アカウントは残しつつ、今後は投稿しないと発表。その理由について、極右の陰謀論や人種差別発言といった不穏なコンテンツが投稿されるXのマイナス面が、利用のメリットを上回ると判断したと説明する。
一般ユーザーの離脱理由も、プラットフォーム上の投稿に嫌気が差したというものが多い。その内容は、ボット、党派的な広告、ハラスメントなどといった問題を含む。常々課題感を持っていたユーザーにとっては、Xのオーナーであるマスクの支持を受けてドナルド・トランプが大統領に選出されたことは、最後の一撃となったようだ。
一方で、選挙戦自体においてはXの影響力は高かった。アクシオスは、選挙日前の約3ヶ月のつぶやき型SNSのトラフィックを比較し、Xがほかのプラットフォームと比較して30倍以上、数にして3000万以上のトラフィックを獲得したというデータを公表。Xは、2024年のアメリカの選挙に関して、世界で9億4200万件という史上最高の投稿数(期間などは示されていない)を記録し、選挙日においては新規ユーザー登録数が15.5%増えたといったデータを公開し、選挙戦で記録的なエンゲージメントを獲得したと自信を示した。政治ジャーナリストのエズラ・クラインは、選挙戦後X使用を再開。Xについて「派閥的な会話に適しており、今民主党にとって非常に派閥的な瞬間である」とコメントしている。
◆にわかに注目が集まるブルースカイ
一方でユーザー数を急激に伸ばしているXの競合プラットフォームがブルースカイ。11月19日時点のテッククランチの記事によると、ブルースカイの全世界のユーザー数は2000万人を超えた。ブルースカイのユーザー数は、少なくとも3億人のユーザー数を抱えるツイッターと比較しても、2.75億人以上のユーザー数を持つメタ所有のSNS、スレッズに比べても少ない。しかし、アメリカにおいての1日あたりの訪問者数に関してはスレッズを超えつつあり、全世界の1日あたりの訪問者数においてもスレッズに近づきつつあるとのことだ。
ブルースカイは、2019年に当時ツイッターの最高経営責任者(CEO)であったジャック・ドーシーが仕掛人となり、ツイッターが出資するオープンソース・分散型SNS構築プロジェクトとしてスタート。当時はツイッターの関連サービスであったが、マスクがツイッターの買収提案を行った数ヶ月前の2022年2月に、パブリック・ベネフィット・コーポレーション(経済的・社会的目的の実現を目指す営利企業)、ブルースカイ・ソーシャルとして独立。現在は元ソフトウェアエンジニアで起業経験もある33歳の女性、ジェイ・グレーバーがCEOを務める。
ロンチ当初は、ツイッターの簡素版のような雰囲気があったが、現在はDM機能なども追加され、ツイッターと似たような感覚で使用できる。ブルースカイの人気はよりオープンでエンターテインメント要素を持ったカルチャーの側面だとヴォックスは分析する。ブルースカイの初期ユーザーはトランスジェンダーの人たちも多く、彼らが独自のメディアカルチャーを作り上げたとの解説がある。
マスクの買収後、政治的要素がさらに強まったXのオルタナティブとして、ユーザーはより多様なコンテンツを共有し合えるプラットフォームを求めているようだ。