プーチン大統領、EUに報復 パイプライン建設中止、トルコへの供給強化を発表
プーチン露大統領は1日、訪問先のトルコで、EUへの天然ガス供給ルートとして計画されていた、パイプライン「サウス•ストリーム」の建設を中止する考えを表明した。代替としてトルコへのパイプライン建設で合意したと発表した。
◆建設中止の背景
ロシアは、ウクライナを経由せず、EUに天然ガスを供給するルートの開設を2つ計画していた。ノース•ストリームとサウス•ストリームである。
前者は、ロシアからバルト海底を通ってドイツに繋ぐパイプラインで、2011年から嫁働している。後者は、黒海海底を通過してブルガリアを中継地とし、そこから二股に分かれ、ひとつはギリシャからイタリアへ、もうひとつはセルビア、ハンガリー、オーストリアに繋ぐものだ。
しかしサウス•ストリームは、中継地のブルガリアに対するEU委員会からの圧力もあり、建設が進んでいない。プーチン大統領は、EUがこの計画に建設的な姿勢をとる意志がないと判断し、それに代わるルートとしてトルコへの供給に合意した形だ。
発表された計画によると、このパイプラインによる供給能力は、当初計画されていたサウス•ストリームと同じ年間630億m3である。この供給量が実現された際には、トルコは140億m3を受給することになっている。プーチン大統領は今回、年間30億m3の供給を決め、価格を6%割り引くことも約束したという。
ウクライナ問題をめぐってEUがロシアに制裁を加え、パイプライン建設も承諾しない背景から、プーチン大統領は、今後の天然ガス供給先の柱をトルコと中国にすることを決意したようである(以上、スペインのエル・パイス紙報道)。
一方、英フィナンシャル・タイムズ(社説)は、欧州はこの計画に乗り気でなかったとして、プーチン大統領の決定は「あさはかな演出」だと批判している。さらに、トルコ市場は欧州市場ほど大きくないとして、“戦略上の失敗”と断じた。
◆トルコ・ロシアの良好な関係
トルコは、ロシアの天然ガスの優良顧客で、ドイツに次ぐ規模だ。同国で最初の原子炉建設もロシアが担当しており、来年からアキュウで開始される予定である。(トルコのヒュツリエット紙 )。
なお日本も歴史的にトルコとの関係は良好で、同国の2番目の原子炉建設は、三菱重工と仏のアレバ社との合弁で、シノップで予定されている。さらに、東芝グループのウエスチングハウスが、3番目の原子炉建設を受注している。
◆キプロス問題も影響か
また、ロシアにとってのリスクは、キプロス沖合いの天然ガス・石油採掘をめぐり、ギリシャ支持のキプロス共和国と、トルコ支持の北キプロス•トルコ共和国との間で採掘権紛争が起きていることだ。この紛争を解決しないと、トルコからギリシャに繋ぐロシアの天然ガスのパイプライン建設が進まない可能性がある。