消費増税は若者に打撃、先送りは高齢者の不安招く…問われる選択 海外も注目

 政府は消費税を8%から10%に引き上げることを18ヵ月延期する決定をした。予想では、増税で国の年収が14兆円増加すると期待されていた。増えた税収は、高齢者の自宅介護、働く女性への支援、年金と医療保険などの改革にあてられることが狙いとされていた。

 財源のないまま改革は進むのか。国民への負担は改善されるのか。海外紙が増税延期の影響を論じている。

◆豊かな国の巨大な負債
 先進国中、日本は国民1人あたりの国の赤字が最も多額となっている、とAPは報じている。

 4歳の息子を持つ母親は、将来のことを案じている。「育児の環境を改善しようとの安倍首相の方針には感謝している。しかし、増税を延期してしまっては、だって、年金制度は崩壊寸前だと言っているのに。改革をすすめて、税金は予定通り引き上げたほうがいいと思う」と同メディアのインタビューに答えた。また、ある大学生は、今すぐの増税は経済を打撃し、結局のところ税収が減るので止めるべきと主張している。

 日本は今でも豊かで、最新の公共交通機関、犯罪率は低く、医療制度も手厚い。しかし、多くは、親やその前の世代が享受した終身雇用という補償なしでやっとこさ暮らしている現状もある。労働者の10人のうち4人は、不安定で手当の少ないパート、あるいは契約社員だ。APは、今の若者にとって、正規雇用や出世などといったことは儚い望みだ、と報じている。

◆増税延期、高齢化社会への不安
 増税延期は、高齢者医療の改善を遅らせることになるのでは、との懸念をブルームバーグは示した。

 出生率の低下と、平均寿命の向上が意味するのは、労働者層が少なくなり、退職者と100歳以上の人口が膨らんだということだ。急速な高齢化は、誰もが気にかけている問題で、街頭、報道、政治の様子を見れば明らかだ、とAPもその深刻さを指摘。

 高齢化が進んでいる国は他にもあるが、日本ほど急速に進行している国はない。国立社会保障・人口問題研究所によると、現在日本の4人に1人が65歳以上だが、その割合は2060年までに全体の40%にまで膨れ上がると推測している。

 日本医療政策機構エグゼクティブディレクターの宮田俊男氏は、高齢化の進む日本で増税は必要な策だった、とブルームバーグで述べている。

 年金に頼る人口は増えるのに納税者の人口は減る。日本は既に世界で最も負債を抱える国だ。日本の福祉への支出は、2020年までに32%増加し、146兆円になるとの数字を同紙は示している。政府は、健康保険改革を進めるための収入として、消費税増税に変わる財源を見いだせないでいる。

 宮田氏は、増税の延期について、医療機関の利益も圧縮されるだろうとしている。日本銀行の金融緩和による円安で、輸入に頼っている日本の医療機関は経費が増加しているからだ。2011年、海外からの医薬品の輸入は1.7兆円だった。日本から海外への輸出の4.8倍だ。医療機器にいたっては、61%が海外からの輸入だという。

◆改革のための財源はどこから?
 議員候補者たちは、選挙の準備に追われている。安倍晋三首相は、企業が賃金を上げ、女性の雇用機会創出を促進する方針を再び打ち出した。また2015年には、日本への投資を誘う法人税減税も行うとしている。しかし一方で、社会保障費を削減、健康保険料を値上げするなど、退職者を含む全ての人々に負担を求めている。

 浜田宏一内閣官房参与は、納税者の負担は最終的には減るだろうと述べた。現状については、「貧しい層にとっては公平だとは言えないだろう。しかし、今のところは、消費税増税を進める必要がある」(AP)としている。

 菅義偉官房長官は19日、4月に始めた子ども手当の財源を見つけると述べたが、具体的な内容について説明はなかった。麻生太郎副総理兼財務大臣は21日、「さらなる税収は見込めない。予算編成では優先事項を決める必要があるだろう」と述べた。

Text by NewSphere 編集部