ほんの数分の読書、ストレス解消に効果的 現実から離れメンタルリセット
近年日本でも大人の読書離れが進んでいるが、実は読書には高いストレス軽減効果があるとされている。日々のプレッシャーから解放され、メンタルをリセットするために、短時間でも日常生活に組み込むことが推奨されている。
◆ストレス低減効果最高 研究で明らかに
2024年1月から3月にかけて行われた文化庁の調査によれば、電子書籍を含め1ヶ月に1冊も本を読まないと答えた人の割合は62.2%となった。ほぼ3人に2人が本を読まない計算で、読書離れが深刻だ。
2009年の英サセックス大学の研究では、読書はほかのリラックス法に比べ、日常生活のストレスから逃れる、もっとも効果的なアクティビティであると報告されている。ストレスレベルは、音楽を聴くと61%、紅茶やコーヒーを飲むと54%、散歩をすると42%低下したが、6分間の読書の後では68%も低下した。(テレグラフ紙)
◆心が落ち着く 脳のリセットにも効果
読書のストレス軽減効果には、その瞑想的な特徴が関係しているという見方がある。米ワシントン州の非営利医療組織マルチケアのアーサー・フィンク氏は、人は読書に集中するとき日常から逃避できるため、心が落ち着く瞬間が訪れることがあるとしている。読書は仕事から家庭への移行をスムーズにし、一日の疲れを癒やすことにも役立つ。また寝る前の読書は一日の興奮を鎮め、眠りにつきやすくするとも述べている。
マルチケアのアンドレア・ボール氏は、プレッシャーのかかる職場や、厳しい学問分野では、レクリエーションとしての読書が脳のリセットに役立つと述べる。単なる楽しみの読書休憩を勤務中に15分ほど作ることで、脳の負担を取り除き、次の仕事のテーマに集中できるようになるという。
イギリスのカミラ王妃が設立した文学チャリティ団体「クイーンズ・リーディング・ルーム」が依頼した調査では、小説を読むことが集中力の向上につながることが分かったという。小説を読む頻度が高い人は、地図を読んだり、新しい場所を探したり、新聞の記事を追ったりすることが楽になったと回答。脳が冴え、知力が向上すると考える傾向が強かったという。(書籍業界誌ブックセラー)
◆他者への共感力もアップ 1日5分でも効果あり?
さらに、読書は現代社会で重要なスキルだとされる共感力の向上をもたらすとされる。フィクションでもノンフィクションでも、どんなものでも読むことで新しい視点を得ることができるため、他人が置かれた状況をよりよく理解できるようになるという。他者と情報や体験を共有できていると感じることで、ストレスが生じても心を落ち着かせることができるかもしれないとボール氏は説明している。
読書したくても時間がないという人も多いが、クイーンズ・リーディング・ルームが依頼した調査では、1日たった5分間小説を読むだけで、ストレスが20%軽減されることが示唆されている。メールやニュースを読むなど日常に必要な読書以外に、楽しみとしての読書の時間を日々のルーティンに取り入れることで、生活の質が上がりそうだ。