石破首相はトランプ氏の「親友」になれるか 求められる「ディール」対応
アメリカ大統領選挙が実施された結果、共和党候補のドナルド・トランプ氏が勝利した。これまでの世論調査では、女性初の大統領を目指す民主党のハリス副大統領が支持率で優勢に立つことが多かった。しかし、開票箱を開けてみればトランプ氏の圧勝で、ハリス氏は選挙人の獲得票数でトランプ氏に60以上の差をつけられた。ペンシルベニアやウィスコンシン、ジョージア、ノースカロライナなど激戦7州を落としたことが決定的な敗因となった。
トランプ氏の勝利宣言からまもなく、各国首脳からお祝いのメッセージが送られており、 すでにトランプ外交は始まっている。今後「トランプ詣で」が展開されていくことだろう。石破氏も5分間という短い時間ながらもトランプ氏と電話会談を行ったとされ、まずはトランプ詣でを行い、個人的な関係を作っていくことが重要となる。
◆トランプの親友になった安倍晋三氏
トランプ再選により、日本は再びトランプ政権と良好な関係を構築していくことが求められる。8年前の大統領選でトランプ氏が勝利した際、国内ではトランプ氏とどう付き合っていけばいいのかと不安の声が広がったが、そのトランプ氏がいるトランプタワーを真っ先に訪問した外国首脳が当時の安倍晋三首相だった。安倍氏はトランプ氏の勝利を祝し、黄金のゴルフクラブを手土産に、自身もゴルフが趣味だと個人的な信頼関係を作っていった。
トランプ氏は原理原則で動く相手ではなく、価値観や理念を重視するのではなく、個人と個人の関係、ディール外交を基本とする。安倍氏はゴルフという共通の趣味を通じてトランプ氏から「親友」と認められ、日本と仲良くすることでアメリカには多くのメリットがあることをトランプ氏に上手くアピール。まさにディールに乗った形で良好な日米関係を構築することに成功した。
◆石破・トランプ関係の行方
では、石破首相はトランプ氏と良好な関係を構築できるのか。これについてはどの程度まで緊密さが必要かという議論にもなるが、石破氏は安倍氏ほどゴルフ通ではないとされ、ゴルフ外交を通じた信頼関係の構築は難しいのではないかと言われる。また、現在の石破政権と当時の安倍政権では政治基盤が大きく異なる。9月の選挙で自民党は大敗し、石破政権は少数与党での政権運営を余儀なくされており、場合によって内政に時間を割かれ、思うように外交が展開できなくなる可能性がある。トランプ氏から信頼を得られる関係を構築するには安定した政治基盤が求められるが、それに欠ける石破政権が安倍・トランプ時代の日米関係を再現することは難しいのではないかと思われる。
いずれにせよ、石破・トランプ関係が誕生するわけだが、石破政権には日本と緊密な関係を維持するとアメリカにはこういった経済的メリットがあるなどディールに基づいたテクニック、理念や原則以上に実利を意識した外交センスというものが求められよう。