“増税延期やむなし” 予想外の2期連続GDPマイナス、海外メディアも見解一致
17日の内閣府の発表によると、第2四半期(7-9月期)のGDPは、前期比で実質0.4%、年率で1.6%縮小した。2期連続のマイナスだ。個人消費は、わずかに0.4%上昇。企業の設備投資の動きは相変わらず鈍く0.2%の減少だった。
発表を受けて円安がすすみ、2007年10月以来初めて一時的に117円を下回った。
◆予想外の景気失速
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙が聞き取り調査した18人のエコノミストのうち1人としてこの結果を予想していなかった。このときの予想平均は、2.25%の増加だった。
4月1日に消費税が5%から8%に引き上げられた後、4-6月期には年率7.3%の縮小だった。2期連続してマイナスがみられたことについて多くのエコノミストが、実質的な景気後退を意味すると見ている(WSJ紙)。
ただ輸出は前期比1.3%増、個人消費は0.4%増と上向いた。しかし企業売上の落ち込みを相殺するほどの勢いはなかった。住宅投資も6.7%減と弱く、8%増税の影響が続いている。
◆増税延期はやむなし
GDP縮小で消費税の引き上げ延期は濃厚となったようだ。
7-9月期の数字は、大きな意味があった。消費税を2015年10月以降、現在の8%から10%に引き上げるかどうかの判断材料となるからだ。安倍晋三首相に近い関係者によると、経済成長が鈍いため、増税は延期し、12月の選挙で同首相の成長戦略に国民の支持が得られるか確認することになるだろうとしている(WSJ紙)。
企業のトップらも、消費税増税については意見が分かれている、と同紙は報じている。一方は日本財政の健全化を示すためにも、増税は必要だとしているが、もう一方は消費者に打撃を与え時期的に実施は間違っていると主張している。
第一生命経済研究所主席エコノミストの新家義貴氏は、「4月の消費税増税が完全に日本経済を破壊した–日本のどこを見ても明るさがない」「今日発表された数字は、日本の政治家に消費税増税に対する新たなトラウマを植え付けることになるだろう」(ブルームバーグ)と述べた。
増税を18ヶ月先延ばしにすれば、さらに0.5%の成長が見込めるだろう、と予想しているのは、自民党の研究チームだ。ブルームバーグでは、この予想に賛同する山本幸三衆議院議員が、消費税を上げ経済縮小の危機を招くよりも、増税延期は税収が上がり経済により良い影響をもたらすと主張している。
海外各紙は総じて、増税延期はやむなしといった論調だ。しかし、国際的な動きに目を移すと、国際通貨基金(IMF )と経済協力開発機構(OECD) などは、日本の財政を健全化させる最良の策だとして、10%にまで消費税を増税することを支持している。
◆海外の人気を確保するため国内世論が必要
消費者物価指数(CPI)の上昇はわずかに続いている。ただこれも15年間緩やかなデフレに慣れてきた各家庭にとって、大きな変化だ。さらに、4月の5%から8%への消費税増税は生活費を押し上げることになった。物価上昇は十分な賃金の向上を伴っておらず、消費税のさらなる引き上げは、消費を冷え込ませ安倍首相の支持率も損なうことになるだろう、とブルームバーグはみている。
政府は、前回4月の消費税増税による経済への衝撃を緩和するため、2013年12月、5.5兆円の特別予算を承認した。今回も麻生太郎副総理兼財務大臣が、経済刺激策の準備はしていると示唆。安倍首相は先週、景気の状態によっては、さらなる特別予算を組むと述べた。
クレディ・アグリコル証券チーフエコノミストの尾形和彦氏は、海外の投資家を惹きつけることは、日本のデフレ脱却に不可欠だとしている。また、「国民からの支持は、海外投資家にアベノミクスを売り込み続けるためにも重要だ」(フィナンシャル・タイムズ紙)と安倍政権が経済政策を進めるには、まず国民の支持が必要だとしている。
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