北朝鮮に頼るロシアの窮状 北朝鮮が大規模派兵か

Kristina Kormilitsyna, Sputnik, Kremlin Pool Photo via AP

 ロシアが異例の事態に見舞われている。兵員不足と経済の行き詰まりは深刻化し、ロシアに北朝鮮が大規模派兵を決めたと指摘される状況にまで陥った。ウクライナ侵攻によって深刻化するロシアの窮状を如実に物語る。

◆100万人を超える犠牲者
 ウクライナ侵攻によるロシアの人的損失は甚大だ。英ガーディアン紙は、ロシアとウクライナの戦闘による死傷者が100万人に上ると報じている。9月のロシア軍の1日あたりの平均死傷者数は、1200人以上に達したという。

 さらに、米フォーチュン誌(10月20日)が指摘するのが、人材流出の深刻な状況だ。戦争を逃れて国外に脱出する若いロシア人が後を絶たず、これがロシア国内の労働力不足に拍車をかけている。「有能な人材が国外へ大量流出」していると同誌が指摘しているほか、ガーディアン紙によるとロシアでは昨年、480万人分の労働力不足が生じている。

◆迫り来る経済崩壊
 ロシア経済は表面上、力強さを維持しているように見える。しかし、この状況は危うく、膨大な防衛費の支出によってかろうじて維持されている。

 米ラトガース大学ニューアーク校のアレクサンダー・J・モティル教授は、米政治専門紙ヒル(10月14日)への寄稿で、来年にもロシア経済が「崩壊」するとの予測を示している。「ロシア経済が落ち込み、社会の不満が高まり、資金が枯渇すると、プーチンは戦争マシンを動かす資源を失うだろう」との見方を示す。

 こうした人的資源の枯渇は、プーチン大統領が進める動員計画にも暗い影を落とす。そこで重視されているのが、北朝鮮との協力体制だ。韓国の情報機関は、北朝鮮特殊部隊の1500人がすでにロシアに到着しているとしている。

 ロシアは北朝鮮からの支援に活路を見出そうとしている。ウクライナの英字紙キーウ・ポスト(10月16日)によると、北朝鮮からロシアに武器供給が行われており、当初供給されていた砲弾だけでなく、現在では弾道ミサイルにまで供給対象が拡大しているという。さらに、北朝鮮の技術者や軍事顧問がウクライナに派遣され、一部はウクライナのミサイル攻撃で死亡した可能性もあると報じられている。

◆北朝鮮以外の諸外国にも依存
 もっとも、北朝鮮問題の専門家であるミコラ・ポリシュチュク氏はキーウ・ポストの取材に対し、「北朝鮮軍の大規模な直接参加について語るのは時期尚早である」との慎重な見方を示している。それでも、ロシアと北朝鮮の関係強化は明らかだ。両国は「戦略的協力」協定を締結し、公式な協力関係を築いている。

 ロシアは人材不足に対応すべく、北朝鮮以外の国々からの労働力への依存も強めている。ガーディアン紙によると、ロシアは中央アジア、インド、ネパール、アフリカ諸国からも労働者を調達しているという。同紙は、「一部の移民労働者たちが、給与や迅速な市民権取得という約束のもと、軍務に誘われている。また、欺かれたり、強制されたりして入隊する者もいる」と報じている。

 ガーディアン紙は、「プーチンによるウクライナの領土併合の試みは、外国人の人員と労働者に支えられている」と指摘し、「ロシアが侵攻前から直面していた根本的な国内問題を示している」と結論づけている。

 プーチン大統領のロシア領土拡大の試みは、北朝鮮や諸外国からの兵士や労働者たちに依存する状態に陥っている。

Text by 青葉やまと