産経前支局長起訴…ネタ元『朝鮮日報』なぜ不問? 海外から疑問
ソウル中央地検刑事1部は、朴槿恵大統領に関する疑惑を書いた、産経新聞の前ソウル支局長、加藤達也氏を大統領に対する名誉棄損容疑で8日起訴した。この決定が、今後の日韓関係と報道の自由に、大きな影響を及ぼすことが懸念される。
【事件はセウォル号沈没から】
事件の発端は、加藤前支局長が、セウォル号沈没事故の発生当日、朴大統領が大統領府を離れ、男性と密会していたという噂を、産経新聞インターネット版でコラムとして書いたことだ。
加藤氏は、証券街の噂、国会でのやり取り、朝鮮日報の情報を引用し、このコラムを書いたが、検察は3度に渡る取り調べの結果、内容は虚偽だと結論づけ、加藤氏を在宅起訴した。
【政府に配慮の韓国紙報道】
APは、報道の自由を擁護する団体である『国境なき記者団』のアジア太平洋担当者、ベンジャミン・イスマイル氏が、噂を最初に報じた朝鮮日報が取り調べを受けていないと指摘したことを伝えている。ところが、この点を主要な韓国紙は取り上げていない。
朝鮮日報は、検察の起訴理由を、「加藤前支局長の記事は客観的な事実と異なり、その虚偽の事実をもって大統領の名誉を傷つけた。取材の根拠を示せなかった上、長い特派員生活で韓国の事情を分かっていながら、謝罪や反省の意思を示さなかったという点を考慮した」と説明。しかし、自社の記事が、加藤氏の引用元になっていることには、全く触れていない。
中央日報も、「証券街の情報誌など信頼できない資料のほかに取材の根拠を提示できない点」が起訴理由のひとつだと報じているが、朝鮮日報の名前は出していない。英字紙コリア・タイムズは少し踏み込み、記事が証券街と「影響力ある韓国紙」の噂に言及したと報じているが、具体的新聞名は伏せている。
しかし、中央日報は、産経新聞社長の「日本をはじめとする民主主義国家が憲法で保障している言論の自由に対する重大かつ明白な侵害」、「日本の報道機関が日本の読者に向けて、日本語で執筆した記事を韓国が国内法で処罰することが許されるのかという疑問を禁じ得ない」というコメントも紹介。朝鮮日報も、今回の起訴は国際社会の批判を免れないと、時事通信が報じたと述べており、日本の主張も伝えることで、報道機関としてのバランスを取った形だ。
【報道の自由への問題提起】
APは、現在はリベラルな民主主義とされる韓国だが、1980年代後半までは軍の独裁が続き、報道機関と反体制派の両方が弾圧されてきたと述べる。評論家の中には、保守的な朴大統領が、自らのイメージをコントロールするため、ジャーナリストたちを今までも弾圧してきたという見方もあり、数週間に渡った加藤氏の取り調べは、韓国の報道の自由に対しての問題提起となったと指摘する。
また、今回の起訴に、冷え込んだ日韓関係や、右翼的な産経が韓国で悪い印象を持たれていることも影響していると、APは述べている。
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