消費税10%は決定済み? 世界に財政再建アピールのため、と海外識者分析

 19日、甘利明経済財政担当相は9月の月例経済報告を関係閣僚会議に提出した。報告では景気の基調判断が5カ月ぶりに下方修正され、「このところ一部に弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」という表現に変更された。

 このように政府も景気判断を見直す中、海外メディアは、来年10月の消費税率10%への引き上げについて、12月にどのような判断が行われるかに注目している。

【甘利大臣へのインタビュー】
 21日付けのフィナンシャル・タイムズ紙は甘利大臣へのインタビューを掲載している。甘利氏は2度目の増税を計画通り行うと述べ、追加的な財政刺激策を講じれば、経済が危うくなることなないと語ったという。

 甘利氏は、2度目の増税は社会保障費の上昇をまかなう上でも、膨大な財政赤字を抑える能力に関する他国からの信頼を損なわないためにも、必要不可欠だと述べた。

【安倍首相の考えは?】
 各メディアは安倍首相が14日のNHK番組で行った発言を紹介している。首相は、消費税率再引き上げの是非について、「経済は生きものだから、ニュートラルに考える」と述べ、7~9月期の経済指標などを踏まえて慎重に判断する考えを強調したという。

 ワシントン・ポスト紙は、安倍首相は経済に強い訳でなく、コンセンサス重視型で、強硬に増税を主張する財務官僚を説得するような強い意志もないと見る。さらに、自民党内の賛成派と反対派とを妥協させようとする彼は、ブレーキとアクセルを両方踏んでいる、という批判的な見方を紹介している。

【ノーベル賞経済学者の見解】
 一方、19日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙は、先日「週刊現代」に掲載された、米プリンストン大学教授ポール・クルーグマン氏に対するインタビュー記事(『日本経済は消費税10%で完全に終わります』)を紹介している。

 クルーグマン教授は、日本の消費税が10%に達すれば、デフレ不況に逆戻りし、悲惨な状態になるとし、増税とは逆に消費税は5%に戻して、国民のインフレ期待を引き上げるべきだと述べている。

【うがった見方】
 中にはうがった見方もある。フィナンシャル・タイムズ紙によれば、日本政治アナリストのトバイアス・ハリス氏は、昨年同様、エリートのコンセンサスは増税実施で決まっており、財界の圧力団体やIMFも承認済みだと見る。同氏によれば、再増税は、安倍政権が日本の財政を立て直す決意であるという他国政府に対するシグナルであり、それは高くつくが、それだけに信頼されるだろうという。

知らないと損する 池上彰のお金の学校 (朝日新書) [amazon]

Text by NewSphere 編集部