福島産米の輸出再開 安倍外交の成果でシンガポールへ 現地では一部不安の声も
2011年の福島第一原発の事故以来、停止されていた福島産の米の輸出を再開すると、全農が発表した。国内外で風評と戦ってきた福島の農業が、海外へ向けての新たな一歩を踏み出そうとしている。
【まずはシンガポールへ】
ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、須賀川市で収穫された300キロの米が、シンガポールに向けて出荷され、5キロ入りの袋が、現地の日系スーパーで22日から販売されるという。
原発事故以前は、年間約100トンの福島産の米が、香港、台湾などを中心に輸出されていた。福島産の桃、りんごなどの果物の輸出は、2012年にタイ、昨年にはマレーシア向けに再開。米は2012年度に17トンが香港に輸出されているが、事故後の本格的な輸出は、今回が初めてとなる(AFP)。
全農の関係者は、「福島の農産物の安全性を説明する努力をしてきたが、今まで買い手を見つけることができなかった」と述べ、「今後はシンガポールも含め、もっと輸出を増やしていきたい」と話したと言う(AFP)。
【事故の影響は大きく】
福島第一原発の事故は、福島は汚染されている、というイメージを国内外に植え付け、政府が安全性を保証しても、原発からずっと離れた土地を耕作する農家でさえ、育てた作物の買い手を見つけるのに苦労してきた、とAFPは指摘する。
県の関係者は、福島産の米は全量全袋検査(放射性物質検査)の対象であることを説明し、米は「1キロ当たり100ベクレルという政府の基準値を満たしている。ほとんどが測定装置の検出下限値以下だ」として、その安全性を強調している(AFP)。
【検査結果を信頼】
5月に安倍首相がシンガポールを訪問した際に、シンガポールのリー・シェンロン首相は、福島からの農産物の禁輸措置を「今すぐ」解くと発表。それにより、今回の米輸出再開も可能となった。
しかし、シンガポールの『The Online Citizen』によれば、国民からは、健康被害を懸念する声が挙がったと言う。
実際に、食糧管理動物保護局(AVA)へは、福島産の食品に産地表示を義務付けるべき、という意見が市民から寄せられた。それに対しAVAは、「日本産食品は検査を受けており、検査結果が基準を満たすものであることを保証する」と返答し、ラベルによる「福島産」表示を支持しなかった(『The Online Citizen』)。
世界には、今だに放射能汚染を恐れ、日本からの食品輸入を禁止したり、追加のスクリーニングを条件として課す国もある。全農は、福島産の安全性をアピールするため、22日からシンガポールの販売先のスーパーに、社員を派遣する予定だと言う。
(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)。
なお、今回シンガポールで販売される米は、産地が明記され、他の産地の米とのブレンドはされていない(AFP)