アベノミクスが東京五輪を妨害? コスト高騰で、会場計画が見直しに
舛添東京都知事は、ほとんどの競技会場を選手村から半径8キロ以内に設けるとした、2020年の東京五輪の会場計画を見直す、と発表した。「コンパクトな」大会を約束したはずの五輪に起きた異変を、海外メディアが伝えている。
【景気回復が足かせ?】
英フィナンシャル・タイムズ紙は「アベノミクスが東京五輪の準備作業を妨害した」と報じ、景気回復が人手不足や資材の高騰を招き、結果として五輪のための建設作業に、支障が生じていると述べている。
29日に発表された6月の有効求人倍率は1.1倍と、1990年代初頭以来の高水準。東北の震災からの復興と、アベノミクス3本の矢の一部である、老朽化したインフラの整備が重なり、建設業界での労働力不足は、今や深刻な問題だと同紙は述べる。
また、円安で建築資材の価格も高騰。日経新聞によれば、競技会場建設のためのコストは、当初の見積もりの1538億円から、2倍の3600億円に膨らんでいるという。
【費用もコンパクトに】
舛添知事は、30日、日本外国特派員協会の会見で、会場計画見直しについて説明した。
ブルームバーグによれば、知事は、膨らむコストを抑えるために、より遠い既存の会場に頼る可能性も示唆。適切な移動計画を立てることで、50キロ先でも30分で到着することは可能だとし、五輪を財政的に実現可能なものにすることが、最も重要だと述べた。
さらに知事は、今回の見直しは、すでに国際オリンピック委員会(IOC)には報告済みと説明。五輪に法外な経済的負担があると認識すれば、将来開催を望む国がなくなるという理解のもと、IOCも計画見直しに同意していると言う(ブルームバーグ)。
実際に、2022年の冬季大会に関しては、経済的懸念から、立候補取りやめ、または招致レースから離脱する国が出ており、IOC自体も将来の開催コストの削減方法を模索中だ(AP)。
【負の遺産への危惧】
一方、開閉会式を行う、国立競技場の建て替えに伴う解体工事でも、問題が生じている。解体工事の入札は1回目が不調でやり直しとなり、7月に行われた2回目でも応札価格が最低水準とした設定価格を下回り、落札保留となっている。
建築家のエドワード鈴木氏は、「途方もない」建て替え自体を、そもそも見直すべきとし、8万人収容の観客席、格納式の屋根など、新国立競技場の多くの設備が、IOCが要求する水準を超越していると指摘する(フィナンシャル・タイムズ紙)。
さらに一部では、五輪により国民に新たな経済的負担が生じるのを危惧する声も出ている。ちなみに、1998年の長野五輪で作られたボブスレー・コースの維持費は、長野市によれば、2012年度で1億9900万円。一方営業で得られた収入は、1400万円にも満たないという(フィナンシャル・タイムズ紙)。