“外資任せ”中国の食の安全が危機に マック、KFC…期限切れ食肉問題の影響に海外紙注目

 上海のテレビ局「東方衛視台」は20日、米国系食品メーカー「OSIグループ」傘下の中国の上海福喜食品が、同工場で使用期限切れの肉を使っていたと暴露報道した。この報道を受け、マクドナルド、ケンタッキーフライドチキン(KFC)、スターバックス、バーガーキング、セブンイレブンなどが中国での一部商品の販売を中止した。

 また中国の国家食品薬品監督管理局は、地方の担当部署に、関係する企業について国内全域に渡る調査を命じた。

【床に落ちた肉を混ぜ込んだ】
 東方衛視台の報道では、問題の工場での期限を過ぎた食肉のラベルを新しいものに貼り換えている様子や、床に落ちた肉を再び加工処理に混ぜるなどの様子が映しだされていた。

 中央政府の国家食品薬品監督管理局による地方政府への指示はこの報道を受けた形だ。同局は22日、米イリノイ州に本部を置くOSIグループが中国で所有する全8ヶ所の食肉加工工場を調査するよう命じた。

 中国国内の各地方政府当局は、疑わしい食肉製品の押収を始めた、とウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。上海の当局は22日、上海福喜食品から供給を受けていた9社を訪れ、100トンの製品を押収したという。

【自衛策を取らざるを得ない海外企業】
 期限切れの食肉を供給されるのではないかという不安から、OSIグループ企業との契約を打ち切る小売業者が増えているようだ。KFCとマクドナルドは21日、同社との取引中止を決定。流れを加速させた。

 また、この期限切れ肉の問題は日本にも波及した。マクドナルドは22日、日本国内のチキンナゲットを一部販売中止とした。マクドナルドは、全体の5分の1のチキンナゲット原料を上海福喜食品から購入しており、日本の販売店の10%が影響を受けるとみられている。

 タイの食肉業者から新しい在庫が補充されるまでのしばらくは、チキンナゲットが品薄になるだろう、と海外各紙は報じている。

 中国では、規制が不十分なために、多くの企業が自国で行う以上の対策を取らなければならないようだ。また同国の法律下では、生産工場での問題がしばしば小売店にも責任が及び罰金が課せられるため、企業は食品会社の監視を強化している、と小売業者は説明している(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)。

【中国人は海外ブランドを信頼】
 拡大する不安と外国企業による機敏な動きは、中国での食の問題に対する過敏な警戒感を示しているようだ。上海に拠点を置く調査会社「チャイナ・マーケット・リサーチ・グループ(CMR)」のアナリスト、ベン・カーベンダー氏によると、中国国内の消費者は、自国の規制の緩さに対しあまり反応を示さないという。「彼らは、マクドナルドなどの外国企業を信頼し、責任ある行動を取ってくれるものと信じている」(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)。ロイターも、多くの中国人は、国内よりも海外ブランドの食品のほうが安全だと見ている、と分析している。

 専門家らは、中国の食品の安全性は2008年から改善してきているとみている。この年、中国では、メラミンが混入した「毒入りミルク」のために、少なくとも4人の幼児が死亡、数万人以上が被害を受けたと言われる事件が起きた。しかし、その後も新しい法律が定めている食肉製造・加工工場への立ち入り検査実施が十分に行われていないとも指摘している(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)。

 食の安全は、中国の消費者にとって、最大の関心事だという。毒入りミルク事件以降も食品スキャンダルは報じられ、国内の不安はさらに高まっているようだ。この問題は、影響力の大きいネットユーザーの間で最も盛んな議論のひとつだ、とロイターは報じている。複数のユーザーが、食品の安全性が疑わしい会社のリストをネット上に投稿しているという。

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Text by NewSphere 編集部