中国紙、広島・長崎に「きのこ雲」描き日本非難 「容認できない」外相抗議も、中国の反応なし
中国・重慶共産主義青年団の週刊紙『重慶青年報』(7月3日版)に、広島と長崎の位置に「きのこ雲」と炎のイラストを描いた日本地図が掲載された。「日本は再び戦争を欲している」という見出しの全面広告で、強硬な論評とともに掲載された。
【外相も強く抗議】
これに対し岸田外相は、「世界で唯一の被爆国の外相として、また広島出身の議員として容認できない」と述べ、「不見識」で、被曝者の感情を逆なでするものだ、と非難した(時事通信)。
ロイターは、『重慶青年報』にコメントを求めたが回答はなかったと報じた。なお当該イラストは、同紙のウェブ版では閲覧できないようになっている。読売新聞に対しても、「取材には応じられない」と述べ、広告主も明らかにしなかったという。
【過激な日本批判】
日本の集団的自衛権行使容認が影響しているようだ。
地図とともに掲載された論評は、「第二次大戦の虐殺者として、血に染まった日本の手は、いまだに乾いていない。集団的自衛権行使容認は、“殺人者”の手に“ナイフ”を返してやるに等しい」と主張。
さらに、現在の「政冷経熱」という日中関係は間違いであり、政治と経済は本来分けて考えることはできないとも述べ、「近い将来、日中の直接衝突の確率が低いとは、もはや言えないと認識すべき」と警鐘を鳴らした。
【背景には集団的自衛権の行使容認】
ニューヨーク・タイムズ紙は、中国人は日本の残忍な占領の記憶を忘れてはおらず、外国人と日本の戦犯によってもたらされた1800年代中期から1900年代中期の「屈辱の世紀」を強調する教育制度によって、それがさらに強固なものになっていると指摘する。
そこに、安倍首相が新たな軍事ガイドラインを表明したことで、中国政府と国営メディアは大きく反応。『重慶青年報』も例外ではなかったが、かなり踏み込んでしまったようだ、と報じている。
【歴史をごまかすのはどちら?】
中国首脳も、日本の集団的自衛権行使容認の閣議決定に続いて、対日批判を強めた。
7日のメルケル独首相との共同会見の場で、中国の李首相は「平和には歴史の教訓を学ぶことが必要」と日本を攻撃した(フィナンシャル・タイムズ紙)。習主席もまた、盧溝橋事件77周年の記念式典で、日本が侵略の歴史をごまかそうとしていると批判した。
これに対しニューヨーク・タイムズ紙は、台湾の退役軍人、郝柏村氏のコメントを引用して、中国の歴史認識に疑問を呈している。
元国防相、元行政院長でもある、郝氏は、記念式典が開かれた抗日戦争記念館を訪れ、記念館は「国民党軍の功績が軽視され、中国共産党の役割が強調されている」と台湾の国営通信社に話したという。
「抗日戦を率いたのは蒋介石だ」と述べた94歳の郝氏は、記念館は「一方の側による歴史解釈だ」とし、中国こそが歴史をごまかそうとしていると非難した。
※追記
日経新聞によると、この問題について、中国外務省の洪磊副報道局長は9日の記者会見で直接のコメントを避け、中国紙への遺憾の意も示さなかったという。