台湾、日本統治時代の建物・鉄道を再活用 新たな“文化発信拠点“として蘇る

 台湾で日本統治時代の建造物の修復、復元が進んでいる。2014年6月14日には南部・台南で、1932年に開業した「ハヤシ百貨店」が復元され、商業施設「林百貨」として生まれ変わった。台北市も日本時代の建物を文化施設として改修、再生する計画を推進中だ。

【生まれ変わった「林百貨」 開店に1000人が列】
 「林百貨」では14日、店頭前を和服や当時の学生服を着た人々がパレードし、再オープンを祝った。山口市出身の実業家、林方一氏が創業。ビルは左右対称の5階建て。台南で初めてのエレベーターも設置され、「昭和モダン」の風を吹き込んだという。終戦後に閉店後、製塩会社や軍施設として使われ、86年から放置されていた。今回台南市が8000万台湾ドル(約2億7000万円)を投じて復元した。

 台湾・中国時報によると、初日は1000人近い人々が数百メートルの列を作って開店を待った。建物が比較的小さいため、入れ替え制での入店に。開店セレモニーに日本から招かれた創業者・林氏の息子の妻・千恵子さん(92)は「当時の記憶とまったく同じ。美しい」と感慨深げに語ったという。

 台湾中央社によると、台南市の頼清徳市長は「林百貨は今後、台南の文化創造活動を後押しするだろう。市民は歴史文化遺産を重視している」と期待を示した。台湾文化部文化資産局副局長の粘振裕氏も「古い世代は往時の盛況を思い出し、若者は文化発信拠点として受け入れるに違いない」と語った。

【「都市の記憶遺産」を残せ 台北市も修復計画】
 一方、台北でも日本時代の建造物をリニューアルする計画が進んでいる。台北市文化局サイトによると、市は昨年、「老房子(古い建物)文化運動」計画をスタート。戦後長い間放置され、荒廃した日本時代の建物、米軍宿舎などを「都市の記憶遺産」として整備を始めた。

 修復後は美術品の展示、芝居の上演などの創作活動の場として低価格で一般に貸し出し、多様な文化の育成、発信拠点とする。先月までの第1期事業では日本統治時代の高官宿舎、50~60年代に使われた駐留米軍宿舎など10カ所を修復。現在第2期として12カ所を選定し、改修に着手する方針だ。

 台湾・自立晩報は、第1期で修復された建造物について「いずれの施設も歴史の雰囲気が濃厚で、再利用する価値は高い。当時の優雅な様子がうかがわれ、文化の香りを発している」と伝えた。

【SLも往時の雄姿で疾走 鉄道ファンもため息】
 復元されるのは建造物だけではない。台湾・自由時報によると、中部・彰化では70年前に日本で作られ、台湾に移送された蒸気機関車(SL)「C57」が復活。現役当時のままに塗装・修理され、今月9日には記念イベントが開かれた。“貴婦人”の愛称で親しまれた美しい機関車の疾走に、集まった台湾の鉄道ファンもため息をついたという。

 台湾師範大学の鉄道専門家は「台湾の鉄道文化を保存するうえで重要な一歩になる」と評価した。彰化ではさらに、日本時代から残る鉄道宿舎群の保存を求める運動も広がっている。

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Text by NewSphere 編集部