日本のカジノ、“米企業に任せろ” 犯罪対策には豊富な経験が必要と米識者
日本国内でのカジノを合法化するための特定複合観光施設(IR)の法案審議が18日、衆院内閣委員会で始まった。法案は、自民党の細田博之氏ら超党派の議員が2013年12月に提出したものだ。
今国会は22日に会期末を迎えるため、本格的な審議は秋に召集される臨時国会になるとみられている。
【カジノ構想実現への一歩】
観光産業振興議員連盟(IR議連、通称:カジノ議連)の会長でもある細田博之氏らによって提出された法案は、世界第3位の経済大国が、ギャンブルを解禁するために経なければならない最初の段階だ、とウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。
カジノ解禁支持派は、10年以上も実現のために努力してきた。18日の動きは、その計画を前に進める重要なものだ。合法カジノの構想は、長年日本国内でささやかれてきた。しかし、喫緊の政策を進めるためや、政権が頻繁に変わったために、これまでは国会での話し合いが脇に追いやられてきた。
IR議連の顧問である大阪商業大学の美原融教授は、「今は、ほんの始まりに過ぎないということを忘れてはいけない。ギャンブルが合法化されるまで、努力を続けるつもりだ」(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)と話す。
細田氏は、「秋季国会の始めには、衆議院で法案を通過させたい。その後、参議院でも賛成を得て、法案成立を目指したい」(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)と述べた。
野党民主党は、地域の意見収集の機会を設けることなどを条件に、話し合いに応じるとしている(ブルームバーグ)。
【期待される経済への好影響】
法案が可決しカジノが解禁になれば、日本は世界で最も大きなギャンブル市場のひとつとなることが予想されている。クレディ・アグリコル証券会社(CLSA)は、ギャンブル事業に関連した日本の収入が、ラスベガスの6倍以上にあたる400億ドルに上ると予測している。
カジノリゾート計画は、停滞した経済への大きな効果が期待され、安倍晋三首相はカジノが海外からの旅行者を惹きつけるという目論見を立てている。日本政府は、2020年までに日本への旅行者を2000万人にまで増やしたいと目標を掲げている(2013年は1000万人)。安倍首相は「大型カジノ施設は、私が掲げる成長戦略の中でも重要なものだ」(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)と5月に発言している。
委員会での審議入りを受けて、日本の関係株は値上がりした。コナミや、パチスロ・パチンコ周辺機器の製造をする日本金銭機械株式会社(JCM)、オーイズミなどが値を上げたと報じられている。
【ギャンブル解禁への不安】
政府は6月16日に発表した経済成長のための戦略の中で、カジノリゾート構想は「観光、地域経済、産業を押し上げることが期待できる。しかしまた、(ギャンブルの合法化による)犯罪の増加を防ぎ、国民の要望に応え、ギャンブル依存の防止を図るなど若者の健全な教育を進めるため、方策を検討する必要がある」としている。
ブルームバーグは、バンクオブアメリカ・メリルリンチのアナリスト、ビリー・ン氏の、米カジノ企業の海外での反汚職対策の経験が、犯罪防止に役に立つだろうとの助言を取り上げている。「彼らは、アメリカ国内だけでなく、海外の異なる司法のもとで不正な取引に関する非常に厳しい規制を経験している」「日本の政治家が彼らを選べば、リスクもより低くなるだろう」
経済再生担当大臣の甘利明氏は、「採決が行われれば、賛成は過半数を得るだろう」と楽観的見方を示し、不安を払拭することも法案成立のための重要な過程だと述べた。「カジノが健全な娯楽、旅行者に魅力ある場所とするための開発について、海外の企業が実際的知識を有していることは認識している」(ブルームバーグ)
ロイターは、アメリカのラスベガス・サンズや、中国・香港系のメルコ・クラウン・エンターテインメントなどの世界企業が、日本でのカジノ経営権を狙っている、と報じている。
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