「伝説の終わり」ランクル70のV8終了、豪州ショック… 予期される価格高騰

Toyota Australia

 トヨタの豪州子会社であるトヨタ・モーター・コーポレーション・オーストラリア(TMCA)は、ランドクルーザー70シリーズのV8ターボディーゼルモデルの生産終了を発表した。すでに生産されたV8モデルの価格高騰が懸念されており、パワフルな走りを求めていたオーストラリアの愛好家はショックを受けているようだ。

◆V8ターボディーゼルモデル、販売終了へ
 TMCAは今年9月、ランドクルーザー70シリーズのV8モデルの生産を終了する。本件を「伝説のトヨタ車がオーストラリアで終了」との見出しで報じた豪カーズ・ガイド誌によると、TMCAの販売・マーケティング担当副社長であるショーン・ハンリー氏は、V8ランドクルーザー70の終了について、環境に優しい車に対する地域社会の期待に応えるためだと説明している。

 V8モデルの注文はすでに2年前から停止されているが、待機リストに載っている顧客の一部は、販売終了までに車を入手できない可能性がある。豪カー・エキスパート誌(7月8日)によるとハンリー氏は、「多くの顧客が長い間待っていることを尊重しており、最大限のV8割り当て数を確保し、できるだけ早く顧客に届けることに専念しています」と述べた。

◆過去にはディーラー提示価格が高騰
 2022年には、ランドクルーザー300シリーズからV8が廃止された。豪ニュースメディアのnews.com.au(7月9日)によると、当時は中古車市場での価格が急騰し、一部のディーラーが利益を得るために価格を吊り上げる事態が発生した。

 この現象を踏まえハンリー氏は、今回も同様の事態が起きると想定している。豪ドライブ誌(7月9日)によると氏は、「これらの車の価値が、一夜にして信じられないほど上がるのは明らかです」と述べている。

 今回の販売中止発表にあたりハンリー氏は、「小売価格を超えて支払わないように」とも呼びかけている。「私たちは、今後引き起こされる可能性のある動向を強く認識しており、そのような行動を抑制するため、非常に強力なプロセスを導入するつもりです」と加えた。

◆「明らかにV8ファンは多い」とハンリー氏
 news.com.auによるとハンリー氏は、「明らかにV8を好む顧客が多い。これが現実です」と語っている。ランドクルーザー70シリーズのV8エンジンモデルの廃止が、一部の顧客にとって受け入れがたいものであることを認めた形だ。

 一方でハンリー氏は、「人々が4気筒エンジンに移行するには時間がかかるだろう」と述べつつも、長期的には市場が4気筒エンジンに移行するとの見方を示している。

 年々厳しくなる排ガス規制に対し、news.com.auの読者は不満感を示している。「政府の政策のせいで、自動車メーカーは人々が欲しがるクルマではなく、欲しがらないクルマを作るようになった」

 カー・エキスパート誌の読者は、パワーの減少を嘆く。「トルクが減って、1速・2速・3速のギア比が短くなる。牽引(けんいん)中であれば、絶え間ないギアチェンジと、むしろひどくなった排気にうんざりするだろう」

 ランドクルーザー70シリーズは1985年に導入されてから約35万台販売。そのうち約半数の17万台を、2007年にデビューしたV8エンジン搭載モデルが占める。

 今後オーストラリアで10万ドル以下で購入できるV8搭載車は、フォード・マスタングGT、ラム1500エクスプレス、日産パトロールの3台だけとなる。

Text by 青葉やまと