中国、慰安婦資料も世界記憶遺産に申請 “日本に反省を促すため”と中韓報道
中国外務省の華春瑩副報道局長は10日、第二次世界大戦中の南京大虐殺と日本軍従軍慰安婦に関する資料を、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界記憶遺産」に登録するための申請をした、と明らかにした。
これに対し菅義偉官房長官は同日、「事実関係を確認中だ。仮に中国が政治的意図を持ってこの案件についての申請をしたと判断されれば、抗議の上、取り下げるように政府として申し上げたい」と述べた。
【中国、申請は「平和が目的」】
中国はこれまでも、ユネスコに資料の存在を認めさせることを模索してきたようだが、実際の行動に出たのは初めてのことだ、と韓国の聯合(れんごう)ニュースが報じている。
華氏は、中国による申請について「人道に反した犯罪が再び繰り返されないように人間の尊厳を」守ることが目的だと説明している。しかしまた、最近の日中関係にも言及し、過去の歴史を真摯に反省しようとしない日本側の態度に問題があると非難している。
聯合ニュースは、従軍したとされる韓国女性に触れ、現在54人が存命だが、平均年齢は88歳と高齢だと報じている。
日本政府は、従軍慰安婦問題について1965年の日韓国交正常化の際に解決済みという立場をとっている。
【申請の内容は?】
華氏は、「中国が提出した資料は、歴史的に重要な価値があり記憶遺産登録に値する」(聯合ニュース)としている。申請がいつ行われたのかは明らかにしていないが、資料は中国国内で見つかったものだという。
産経新聞によると、申請した資料には、中国政府が今年4月に公表した南京での日本軍による事件に関する吉林省の文書や、江蘇省南京市の公文書館が2月に公開した1937~47年当時の慰安婦などに関する資料が含まれているとみられるという。
華氏は、資料が「信頼に値する貴重なもので、申請の基準に適っている」(聯合ニュース)と述べた。
上海師範大学中国慰安婦研究センターの蘇智良所長は、「この歴史的資料は、日本政府と軍が性的労働の強要を行ったという事実を証明するだけでなく、そのような行為が広く行われていたことをも示すものだ」(人民日報)と主張している。
【日本は特攻隊員遺書を記憶遺産登録の申請】
中国の申請に先立ち、日本は今年2月、鹿児島県南九州市の知覧特攻平和会館に収蔵されている特攻隊員の遺書などを「記憶遺産」に登録するための申請を行った。同施設には大戦末期の沖縄戦で亡くなった旧陸軍特別攻撃隊員の遺書や写真など約1万4000点を収蔵している。
日本からの申請に対し、中国・韓国はこの動きを強く非難している。