議会突入、死者も…収まらないケニアの増税法案反対デモ 何が起きているのか?
27億ドルの追加税収を見込んだケニアの2024年財政法案に対して、市民が反発の声をあげ大規模なデモが発生した。生活必需品に対する増税案は一部変更となったものの、市民の反発は続く。
◆税法改定を含む、2024年財政法案に対するデモ抗議
今年5月に議題に上がったケニアの2024年財政法案(Financial Bill)は、所得税や付加価値税を含む、いくつかの税制改定の提案を含むもので、ケニア政府はこの財政案によって27億ドルの追加税収を見込んでいる。しかし、この法案がパン、ケニアの都市から農村まで広く普及するモバイルマネーの送金サービス利用、自動車税など、さまざまな生活必需品に対する増税が含まれ、市民の強い反発を招いた。
ケニアの活動家は財政法案の撤回を求め、#RejectFinanceBill2024(財政法案を拒否せよ)、#OccupyParliament(議会を占拠せよ)といったようなハッシュタグを使い、今月18日からデモ抗議を行っている。すでに物価上昇が国民生活を圧迫している状況があるなか、生活必需品に対する増税案は受け入れられないというのが市民の反応だ。
デモ抗議に対して、ケニアの警察は放水銃、催涙スプレー、さらには実弾などを使い、武力を行使して鎮圧を試みた。デモ隊と警察の衝突で少なくとも200人が負傷、100名が逮捕された。25日にはデモ隊が国会議事堂の敷地内に侵入し、警察が発砲して対応。数名が殺害されたと報じられている。
◆増税案の一部撤回後も続く市民の抗議
デモ抗議を受け、財政法案に盛り込まれたいくつかの項目は削除もしくは修正された。具体的には、パンに対する16%の付加価値税、モバイルマネー送金に関する増税、年間2.5%の車両税、食用油に対する課税案の取り消し、国産品に対するエコ税の見送りなどが含まれる。その後、議会における採決が行われ、賛成204対反対115で財政法案が議会を通過した。法案は委員会による第三読回を経て、可決されれば大統領の承認を経て、施行という流れだ。
しかしながら、デモ抗議を行う市民は財政法案の完全撤廃を要求している。この財政法案と税制改正は、貧困層を経済政策の中心に据え、税金を減らし、生活費を下げるとしたルト大統領の選挙公約に反するものだと抗議する。大統領は就任以来、ケニアは他国と比較して税率が低いとし、正当な税金を納めるべきであると国民に訴えてきた。債務問題に対処するために国際通貨基金(IMF)からの融資を受けているケニア政府には、歳入増加策を強化するという課題もある。
一方で、大統領自身はプライベートジェットをチャーターして移動するなど、裕福な暮らしをしていることなどもあり、特に若者は政府に対して多くの不満やいら立ちを抱えており、ルト大統領の辞任を求める声も上がっている。