黒田総裁の「完璧」な戦略か? 海外メディアは円高懸念も、日本で評価の声

 21日、日銀は金融政策決定会合を実施し、政策方針の現状維持を全会一致で決定した。

 公表された声明によると、日銀は、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しているとみている。2%の「物価安定の目標」実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、年間約60〜70兆円の資産買い入れを継続するという。

 この後で行われた記者会見で、日銀の黒田総裁は、消費税率引き上げ後の景気について強気の見方を繰り返す一方、「内外の市場の動向を考えると円高になっていかなければいけない理由はない」と述べ、最近の円高進行に警戒感を示した。

【円高で目標達成困難に】
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(以下、ウォール紙)は、これ以上の円高が進めば輸入品の価格が下落し、物価上昇2%の目標達成が困難になるだろうと述べる。

【円高の理由は日銀の自信】
 さらにウォール紙は、市場関係者が黒田総裁の言葉を、早急な追加緩和策の実施がないというメッセージと受け取る結果、円は高くなり、株価は下がるだろうと見る。

 ニューヨーク・タイムズ紙も、日銀が追加刺激策なしで物価上昇目標を達成する自信を示したと見つつ、このようなコメントが円高を助長するだろうと述べている。

 ただし、日銀が円高対策のために、今後数ヶ月以内の追加緩和を準備しているかも知れないとの見方も一部に存在するという。

 同紙は、「近々追加緩和が行われるという期待が高まれば、円は売られるだろう」というバークレイズ銀行の為替ストラテジストの言葉を紹介している。

【2%目標は時間稼ぎ】
 これに対して、日銀は物価の2%上昇という目標を達成する気はなく、この数字の真のねらいは時間稼ぎである、という穿った見方も国内に出てきている。

 慶應義塾大学准教授の小幡績氏は、東洋経済オンラインへの寄稿で以下のように述べている。

「2%に固執すると思わせて、実は、1.5%の安定を愉しむ。この間に、日本の構造改革を進めさせ、潜在成長率を上げさせる。時間稼ぎのワナで、黒田氏は実は2%を達成しようとは思っていないのだ。」

 この状態こそ、追加緩和を求める「狂った市場の声」に対抗できる、「完璧」な戦略だ、と同氏は評価している。ただし同氏は、「妄想に過ぎないかもしれない」と断っているが。

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Text by NewSphere 編集部