日本の年金基金は128兆円、メキシコ経済より巨大 運命決める8名に海外紙注目

 厚労省が年金資金運用基金(GPIF)運用委員会の新しい顔ぶれを発表した。各紙は、国債の比重を下げて株式などのハイリスクハイリターン投資を拡大するよう提言している諮問パネル識者らが重視されていると報じ、アベノミクスに沿ったGPIF改革の進展を示唆する。

【大半が新任の大幅刷新】
 委員は任期2年で、味の素常務・大野弘道氏、東洋大学文学部教授・佐藤節也氏、学習院大学経済学部教授・清水順子氏、連合総合生活開発研究所専務理事・菅家功氏、三菱総合研究所主席研究員・武田洋子氏、産業革新機構社長・能見公一氏、野村総合研究所上席研究員・堀江貞之氏、早稲田大学大学院教授・米澤康博氏の8名。留任は大野氏と、任期途中の能見氏のみ。現在の10名から減員されるが、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は法律上、定数は11名と指摘している。日経新聞、共同通信などによると、互選される委員長には米澤氏(63)が濃厚だという。

 米澤氏についてロイターは、「年金問題の専門家である米澤は、2008年から2010年までGPIF運用委員会を率い、厚労省年金局のいくつかの諮問パネルに座っている」と紹介した。他に堀江氏と菅家氏も諮問パネルのメンバーであり、これらパネルはインフレを促進し投資を促そうとするアベノミクスの方向性に沿って、安全だが利益率の期待できない国債偏重を改め、株式などへの戦略転換を提言してきた。

 またロイターは、おそらく菅家氏と大野氏を指して、「年金が危機に瀕している主要労働組合連合と、最大のビジネスロビーから代表1人ずつ」というバランス配慮を指摘してもいる。ブルームバーグは、女性が2人(清水氏と武田氏)含まれることにも言及した。

【メキシコ経済より大きい巨大基金の改革】
 GPIFの資産規模は128.6兆円に及び、メキシコ1国の経済より大きい。12月末時点では日本国債が資産の55%を占め、17%が国内株式、15%が外国株式、11%が海外債となっている。目標値としては国内債券60%、国内株式12%、外国株式12%、外国債券11%、それに短期資産5%であるという。この巨大な投資家の動向は、世界の金融市場から注視されているとロイターは解説する。

 ブルームバーグはすでにGPIFが、伊藤隆敏・東京大学教授率いる、米澤氏らの諮問パネルの提言を聞き入れて、各種の改革に乗り出しつつあると報じている。インフラ投資などへの多角化、ROE(株主資本利益率)やガバナンス体制を重視した銘柄ラインナップであるJPX日経400指標の採用、投資専門家の雇用などだ。他に、伊藤氏のパネルは厚労省からの独立性強化や、一部の運用委員の常任化を提言しているという。

 伊藤氏は「GPIFのガバナンス構造を変更するにはいくつかの段階が必要であり、第一は、運用委員会のメンバーを変更することです」「現在ファンドには取締役会がありませんので、我々のパネルは、運用委員会がもっと力を持つべきだとアドバイスしました」などと語っている。現在の、三谷隆博社長が全ての意思決定力と責任を持っているシステムは、「十分に機能しない可能性がある」という。

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Text by NewSphere 編集部