「日本がセール中」殺到する訪日客、2ヶ月連続で300万人超 オーバーツーリズム対策も
日本政府観光局(JNTO)が毎月発表している訪日外客数データによると、訪日客は3月に単月として初めて300万人を超え、4月に関しても300万人超えを記録した。
◆記録的な訪日客数に外国メディアも注目
JNTOの発表によると今年3月、訪日客は308万1600 人となり、前年同月比では 69.5%増、2019 年同月比では 11.6%増。また先日発表された4月のデータに関しても、304万2900 人となり、訪日外客数は2ヶ月連続で300万人超えを記録した。3月に関しては、ベトナム、インド、アメリカ、カナダ、メキシコ、ドイツ、イタリア、北欧地域からの訪日客数が単月過去最高を更新。4月は、フランス、イタリア、中東地域からの訪日客数が単月過去最高を更新した。JNTOの発表では、桜シーズンによる訪日需要の高まりや、イースター休暇、イスラム教のラマダン明けなどの文化行事に関連した旅行需要の高まりなどを、訪日客増加の背景としてあげている。
4月の訪日客の内訳に関しては、韓国からが最も多く総数の2割以上(66万人)を占め、中国、台湾と続く。アジア圏以外だと、アメリカからの訪日客が約23万人と最も多く、カナダとフランスからはそれぞれ約5.2万人が訪れた。市場によっては航空券代金の高騰などもあるようだが、直行便数の増加などもあり、訪問のハードルは下がっている。さらには、多くの市場において円安傾向が継続しており、訪日客数や消費額の増加に影響している。
フォーブスの記事では、「日本がセール中だ」という見出しのもと、円安の影響で昨年に比べてすべてが約15%も安くなっている状況を伝えている。観光庁が四半期ごとに実施している訪日外国人消費動向調査の2024年1-3月期の1次速報によると、同期間における訪日外国人旅行消費額は1兆7505億円(2023年同期比73.3%増、2019年同期比52.0%増)であった。旅行客の最も大きな消費カテゴリは宿泊(32%)であるが、それに並ぶぐらいの金額を占めるのが買い物(29%)。ナイキやアディダスなどのグローバルブランドの商品は、自国の価格と比較すると特に割安に感じられるようだ。
◆オーバーツーリズムに対する対策も
一方、京都や富士山などの人気の観光地ではオーバーツーリズム対策も講じられている。今年4月から京都の祇園の一部で観光客が立ち入り禁止となったことは、ビジネスインサイダー、ガーディアン、サウスチャイナ・モーニング・ポストなど多数の海外メディアでも話題になった。過去、観光客が着物姿の芸者や舞妓を写真に収めようと執拗に追い回したりする「ゲイシャ・パパラッチ」が問題になっていた。
また富士山に関しても、1日の登山者数を4000人に制限するために、最も人気のある吉田ルートに関しては事前にオンライン予約をするというシステムが導入される。予約サイトでは、7月から9月までの夏山シーズンの予約が可能。登山者が事前に計画を立てて、入山することが期待されているが、1000件分は当日予約のために確保されている。
他方、富士山の景観とコンビニのコントラストがSNSで話題になって、外国人観光客を引き寄せていた富士河口湖のローソンにおいては、観光客が交通ルールやマナーを守らないなどという問題が浮上したため、富士河口湖町が2.5メートルのネットを設置し、富士山を見えなくするという異例の措置が取られた。ローソン側からも、近隣住民などに対して謝罪文が出されるという事態にまでなった。
今後、ますます増えることが期待される訪日外客。オーバーツーリズムは日本だけの問題ではないが、一部の観光客の立ち振る舞いによって、行政が行きすぎた規制をしたり、訪日客がステレオタイプ化されて嫌厭(けんえん)されたりして、日本がさらに保守化していくような事態は避けたいものだ。