日韓局長級協議、開催前から見解の違い明らかに 韓国「慰安婦問題」、日本「関係改善」

 日本と韓国は16日、外務省局長級協議をソウルで開催する。日本からは伊原純一アジア大洋州局長が、韓国からは李相徳(イ・サンドク)東北アジア局長が出席する予定である。

 7日にワシントンで行われた日米韓の局長級会議では、北朝鮮の核・ミサイル問題をめぐる対策で合意があった。今回の2国間協議では、従軍慰安婦問題についての議論が重点議題として見込まれている、と海外各紙が報じている。

【韓国報道は両国の溝を指摘】
 朝鮮日報はこの協議を、慰安婦の賠償問題について「1965年の請求権協定により解決済み」との立場を貫いている日本と、「生存している被害者たちが納得できるだけの措置が必要」との立場を取る韓国との戦い、と表現している。聯合ニュースも、「両国の溝を埋めるのは容易ではない」という分析を報じている。

 朝鮮日報によると、韓国政府当局者は、「慰安婦問題に対する協議の枠組みを初めて設けたことに意味がある」と述べているという。

 また中央日報は、オバマ米大統領のアジア歴訪前までに日韓関係を改善すべき、という米政府の促しにより、この協議が開催される運びとなった、と伝えている。

【米紙が伝える日本の立場】
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、この協議を「多少は前進」と報じている。ただ、急激に悪化した両国の関係を一気に解決するものではない、と見ている。

 同紙によると、日本の外交筋は「何十年にも渡る論争に大きな進展が見られる可能性がまったくないとは言わないが、両国の溝はあまりにも深いので、直ちに合意という見込みは薄いだろう」と語っているという。

【アメリカはどう機能すべきか】
 アメリカの国際政治雑誌『フォーリン・アフェアーズ 』の論説は、「オバマ大統領は今月の訪日訪韓に際し、両国が関係改善のためにできること全てに取り組むよう促すべき」と述べている。

 同誌は、日韓の関係悪化がアメリカ政府にもたらす差し迫った懸念は北朝鮮問題としつつ、より長い目で見た問題についても指摘している。例えば、韓国が中国との結びつきを強めていることだ。東シナ海における中国の挑発行為に対し、韓国は大きな抵抗を示していない。それは、中国のより強硬な対日姿勢へとつながっているという。

 さらに問題なのが、日本の自衛隊に対する韓国の抵抗だという。米政府にとって、日本が集団的自衛権の行使を可能とすることは、日米同盟の強化に不可欠だ。これを批判する韓国のせいで亀裂が入れば、米政府は傍観している余裕はない、と同記事は述べる。

 米政府にとって日韓の仲違いはなんとか解消したい懸念だが、慰安婦問題のような議論は積年の複雑な背景がある。ならばアメリカは、審判役を買って出るのではなく、進行役として話をまとめる手助けをするのが得策ではないだろうか、との見方を、外交問題評議会のシェイラ・スミス氏は同誌に示している。

【日韓の見解の違い】
 韓国メディアは、この協議を「従軍慰安婦問題のために設けられた枠組み」と報じる。一方、日本の匿名外交関係者は「重要なのは、中国や北朝鮮の対策が急務な中、日韓の両国とも互いの関係悪化は好ましくないと考えていることだ」と語っているという(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)。

 それが、特定の問題を解決するためというより、双方の利害を一致させることが日本側の目的、という意味ならば、すでに韓国側とは見解の違いが生じているようにも見える。

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Text by NewSphere 編集部