南極調査捕鯨、日本の敗訴は“一石二鳥”のチャンス? 海外紙の分析とは
日本の南極海調査捕鯨を禁じる判決が31日、オランダ、ハーグにある国連の国際司法裁判所で下された。日本が科学的調査だとする捕鯨活動は、調査報告が僅かしかなされておらず、実際は政治的・商業的なものだとの判断だ。
【捕鯨反対派は判決を歓迎】
裁判官は、日本への全ての捕鯨活動の許可を直ちに無効とし、現在の活動計画のもとではいかなる捕鯨も認めないと述べた。日本側のスポークスマン四方敬之・内閣副広報官は判決に対し、「非常に落胆した」と話したが、日本は決定に従うとしている。
一方、捕鯨反対の立場をとる環境保護活動家たちは結果を歓迎している、と海外各紙は報じている。シーシェパードのオランダ代表ガート・ボンズ氏は「国際司法裁判所の決定はとても喜ばしい」「ここまで明確な内容になるとは全く予想していなかった」と喜びをニューヨーク・タイムズ紙に語った。
また、裁判を起こした2010年労働党政権時の環境大臣ピーター・ギャレット氏は、「最高に嬉しい。科学的調査などと見え透いた嘘はすっぱり止めて欲しいと願った多くの人が喜んでいるだろう」とのコメントをタイム誌が報じている。
ニューヨーク・タイムズ紙は、近年、日本の消費者が鯨肉をあまり好まず、環境保護活動家たちによる漁の妨害行為もあり、捕鯨活動は経済的困難に直面している、と報じている。そのため、操業を公的資金に頼っていて、東日本大震災復興のための基金も一部使われているという。評論家は、捕鯨活動は経済的に破綻しているとし、今回の判決が、無駄金を使い続ける活動を止め、海外の悪い印象も払拭できるいい機会だ、と指摘している。
【日本が捕鯨活動を続ける余地も】
しかしながら一方で、判決後も日本は簡単に捕鯨を止めないだろう、と同紙は予想している。
日本の専門家によると、裁判所の判決は、日本が北太平洋で行っている調査捕鯨や日本国内の漁師が行う沿岸での小規模な漁については影響しないという。「重要な判決だが、日本政府に捕鯨を続けさせる十分な余地を残している」「日本は調査捕鯨を再び始めるだろうが、その際禁止事項に触れない、これまでとは違う名目を使うだろう」との見方を同紙が取り上げている。
また、ノルウェーとアイスランドは国際捕鯨委員会(IWC)が1986年に決めた商業捕鯨
一時禁止を“拒否”という単純な方法で事実上承認されていることから、タイム誌は、日本がIWCの決定に縛られないために組織から脱退するという選択肢もあるだろうとしている。
【豪首相は両国関係に配慮】
オーストラリアのジョージ・ブランディス司法長官は31日、捕鯨禁止の判決後も「オーストラリアと日本の関係は揺るぎない」と話した(英ガーディアン)。同氏は、両国は“細かな点”で異なった見解を持つが、良好な関係を維持しようと願う気持ちで結びついていると述べた。
判決は、トニー・アボット首相が自由貿易協定の締結のため日本を訪れる数日前に下されたが、同首相は、判決内容がこれまでの交渉を無駄にすることはない、と話したことをガーディアンは伝えている。
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