中国で化学工場拡大反対デモ 逮捕者出るも終息

 中国浙江省寧波市で、石油大手の中国石油化工(シノペック)が計画する化学工場の拡張に対し、住民の抗議活動が激化。警察による催涙弾の使用や、環境保護に尽力するとの当局からの説明などで、鎮圧が図られたが、住民の怒りはおさまらなかった。デモの異例の大規模化・長期化を受けて、市政府は毒性の強いパラキシレン(PX)生産事業の撤回を発表。住民の批判が共産党上層部の特権の享受に向き始めたことも一因とされる。最高指導部の交代人事を決める10年に一度の党大会を来月8日に控える当局が、治安維持を最優先にし、住民側の要求に折れた形だ。
 当局の従来の手法が通じず、混乱が膨らんでいった点が、現在の中国が抱える不安定さと次代の指導部が直面する問題を浮き彫りにしたといえるだろう。

Financial Timesの報道姿勢―住民勝利 しかし、約束は守られるのか―
 今回の大規模なデモについて、当局がお決まりの手段―計画の棚上げ発表―を用い、それによって一応の鎮静化が見られた、と報道した。
 近年、中国人の環境意識が高まり、デモという手段に訴える例が増えている。環境問題をきっかけに、鬱積する民衆の不満はいつ爆発するともしれない。環境運動家は「(環境汚染の)時限爆弾はすでにセットされている」と語り、経済成長を最優先してきたツケが、もはや待ったなしの状況にあるとしている。
さらに、2007年に同じようにPX工場に反対し、市長から閉鎖の確約を勝ち取った大連のデモを紹介。しかしその約束は守られていないと述べ、今回の勝利の先行きに含みを持たせた。

The New York Timesの報道姿勢―ネットのつながりが動かす街頭政治―
 中国国内では近年、都市の知識層がソーシャルメディアを活用して、環境問題のデモを扇動している。不法で発起人には逮捕の危険がある一方、望む結果が得られる場合もあるという。 
今回も、民衆が警察車両を襲撃した様子や、警察が警棒を振り回して民衆を追い散らす様子が、文章や携帯写真で多数投稿された。
 さらに、ある弁護士が、民衆を攻撃した警察官の後悔の言葉を投稿したと紹介。ネットという情報網が、当局の支配力を超え始めていることを示唆した。

The Wall Street Journalの報道姿勢―利害の衝突 経済発展か、環境保護か―
 今回のデモを、中国の経済発展を目指す当局と、健康や環境に目を向け始めた民衆との衝突と分析した。
 当局の譲歩については、党大会を前に、絶対に社会不安を収めようとする姿勢の現れとした。一方、今回のようなデモは、中国人の間に高まるNot In My Back Yard(必要なのはわかるけれど、うちの裏庭ではやらないでの意)気運の高まりであると分析。ネットでは、デモの勝利に対する賞賛の声が上がったり、当局の声明が発表後30分で56,000回もポストされたとし、当局と地方政府の警戒態勢も載せつつ、その他の社会不安に比べれば一過性になりやすく、当局の譲歩があれば沈静化しやすいとした。

Text by NewSphere 編集部