合成麻薬「フェンタニル」危機で非常事態宣言 米ポートランド中心地

Beth Nakamura / The Oregonian via AP

 米オレゴン州選出の首長らが30日、ポートランドのダウンタウンでフェンタニルに起因する公衆衛生と治安の危機が高まっていることを受け、非常事態宣言を出した。

 オレゴン州のティナ・コテック知事、ポートランド市のテッド・ウィーラー市長、マルトノマ郡のジェシカ・ベガ・ペダーソン議長が宣言した。期間は90日間で、ダウンタウンに設置された司令センターで協力と対応にあたる。3政府は各機関に対し、救急隊らと協働して合成オピオイド中毒者が薬物治療プログラムなどの援助を受けられるようにすること、また薬物販売を取り締まることを指示している。

 コテック知事は声明で「私たちの国も州も、これほど致命的な中毒性のある薬物は経験したことがなく、どのように対応すべきか苦慮している」と述べた。

 今回の宣言は、ポートランドのダウンタウンの活性化策を検討するため、昨年数ヶ月にわたって会合した知事設置のタスクフォースからの勧告により出された。

 今後90日間、ポートランドのダウンタウンの救急隊員がフェンタニル中毒者に接触し、新しい指令センターでトリアージされることになる。センターの職員は、薬物治療センターのベッドから、フードスタンプの登録を支援する行動保健臨床医との面談まで、さまざまな支援リソースにつなぐ。

 ポートランドのテッド・ウィーラー市長は声明の中で、「異なる分野のリーダーたちが日々一堂に会して、それぞれの解決策にあたることの重要性を過小評価してはいけない」と述べる。

 ポートランド市地域安全課のマイク・マイヤーズ課長が、市の指揮チームの責任者となり、オレゴン州の復興・危機管理局のネイサン・レイノルズ政策副主任が、州チームの責任者となる。

 この取り組みにより、ポートランド市警察はオレゴン州警察と提携し、ダウンタウンでフェンタニルが販売されていないか、共同でパトロールを行う。さらに、地域全体で薬物使用防止と回復プログラムを中心とした情報キャンペーンを開始する。郡は、オピオイド拮抗薬「ナルカン」の投与方法に関する普及活動と研修を拡大する。

 このプログラムでは、成否を測る目標は設定されていない。コテック知事は、今後90日間で次のステップのロードマップを作成すると述べた。

 過去20年以上にわたってアメリカを悩ませる合成オピオイド中毒と過剰摂取の危機をめぐり、連邦、州、地方レベルの政府は解決策に奔走している。

 州レベルでは、オレゴン州の議員らが、同州の薬物非犯罪化法の重要部分を取り消す新法案を提出した。ホームレス状態の人が増加し、公の場での薬物使用がより目立つようになったため、世論は非犯罪化法に嫌悪感を抱いている。

 また、ジョー・バイデン大統領と中国の習近平国家主席は昨年秋、フェンタニルの製造に使われる原料を中南米などに出荷しないよう、中国政府が自国の化学企業に指示したと発表した。フェンタニルは主にメキシコで製造され、その後アメリカに密輸されている。

Text by AP