シリア内戦 一時休戦か-実行への不安・反政府軍の対応-

シリア 来るイスラム教の祝日イード・アル=アドハーの期間に、シリアが内戦を一時休戦することに同意した、と国連は発表した。国連シリア特使のブラヒミ氏は「シリア政府は休戦に同意した。また私が連絡の取れる反政府勢力のリーダーたちも、休戦に賛同してくれた。」と述べた。
 しかし、地域内でも世界全体でも不安の声が多く挙がっている。なぜなら、その休戦は、いつから始まり、いつまで続くのかも定かではないからだ。またそれが実行されているかどうかを確認する役割を誰が担うのかも発表されていない。また過去にも、休戦協定に同意したが、結局実施しなかった経緯などから、今回も疑いの目がかけられている。
 また反政府勢力の対応も冷ややかである。彼らは、素直に従うつもりはなく、ブラヒミ氏の動向を見て、最終的な行動を決定すると述べた。
 今回の休戦協定は実行されるのか?国内の情勢はどうなる?海外各紙から読み取る。

Financial Timesの報道姿勢―ロシア、アメリカの関与を指摘―
 今や、シリアでは反政府勢力の数も増え、勢力が増してきている。それに対して、ロシアはアメリカが関与しているのではないかとの疑いを寄せている。ロシアは、シリアの反政府勢力が保有する可動式のミサイル発射機の中に、アメリカ製のものがあることを発見し、アメリカが輸出したものだと指摘。対してアメリカは断固拒否している。確かな証拠があるなら持ってきてほしいと強気の姿勢をとった。

The New York Timesの報道姿勢―反政府勢力リーダーは、ブラヒミ氏に懐疑心―
 国連シリア特使のブラヒミ氏は、反政府勢力のリーダーたちからも同意を得たと述べたが、それはあくまで一部であるようだ。事実、多くの反政府勢力司令官たちは、「シリアのアサド政権は、うわべで休戦するといっているが、本当のところそれは無理だ」と述べた。それだけでなく、今回の休戦中に、国中、特に北部の勢力をとらえるという目論見があるのではいか、とまで指摘した。また、休戦協定を守らせるにしても、その仕組みが全く用意されていない事を指摘し、政府がその協定を自ら実行に移すまで、戦い続けるとの意思を表明した。
 政府が休戦を受け入れてほしいなら、囚人の解放や支援などの条件を受け入れてほしいとの願望も述べた。

The Wall Street Journalの報道姿勢―増え続ける死者、国連におけるシリアの信頼―
 シリアでは、4月にも休戦が発表された。しかし結果は2,3日で崩壊し、国中による多くの暴動などを引き起こす結果となってしまった。その時以来、反政府勢力の数は増えており、また各地方にまで拡散してしまったために、反政府勢力の大勢のリーダーたちと交渉することは、ますます難しくなりそうだ。
 それに伴い、国内での死者も増え続けている。イギリスの集計結果によれば、34,000人が、これまで死亡していて、ここ数か月で急増している。首都ダマスカス北部の町でも、政府軍の攻撃と思われる爆撃で25人が死亡。南部の町でも、ミサイルが撃ち込まれ4人が死亡、11人が負傷した。
 これに対しシリア政府は「これは反政府勢力が、私たちの国連での信頼をなくすためにやっていることだ。」と、主張した。彼らは事件の当時にその場所にいなかったことなどの証拠も用意して、関与を否認し信頼を守ろうとしている。しかし、住民などからは政府軍の攻撃であるとの証言も出ている。

Text by NewSphere 編集部