爆弾、武器売買、内部対立…先の見えないシリア内戦
シリアのアサド大統領がブラヒミ国連・アラブ連盟合同特使と会談中の日曜、首都ダマスカスの旧市街で主にシリアの少数派であるキリスト教徒の居住するバブ・トゥーマと、最も人口の多いアレッポで爆発が起きた。ともに自動車に仕掛けられた爆弾が爆発したもので、ダマスカスでは死傷者も出ている。シリアではアサド大統領の政府軍と反政府勢力の戦いが続いている。ブラヒミ特使は金曜から4日間に渡り行われるイスラム教徒の祝日「犠牲祭」期間中の停戦を呼びかけたが、アサド政権、反政府勢力ともに応じる様子はない。
Financial Timesの報道姿勢―シリア反政府勢力内部対立―
反政府勢力の司令官アリ・ベロ氏は先月末、北シリアのアレッポ郊外で何者かに撃たれた。犯行は反政府勢力内の敵対グループによるものだとされている。反政府勢力内部では、物資や縄張りを巡る対立が懸念されている。
革命後のために既に弾薬を備蓄し始めたグループもあると言い、アサド政権後のシリアが武装民兵に乗っ取られる事への恐怖を物語っている。現にリビアでは民兵がカダフィ大佐を倒す力になったが、武装グループを解体できず、そのうちの一つが先月ベンガジでスティーブンス米国大使を殺害している。
最近一つの司令のもとに統率しようとの試みがなされたが、同じ土地でさえ安定した同盟関係を結べず、原因は外部から物資などの援助をする側がこぞってシリアに影響を及ぼそうとする事と言う。
アレッポは反政府集団の土地で、サラフィストのような原理主義者から穏健なイスラム教徒まで幅広い反政府勢力の戦士がおり、それぞれ外部からの支援を受けている。これら支援者が地元の軍評議会を通じしかるべき集団に配給している武器を、反政府勢力に流通させることで対立への解決を考えていると言う。しかし、シリアが国際的武器市場であること、外部の支援者からの財政援助も明らかにシリアに対する政治的・思想的意図があることから解決手段にはならないと見られる。
New York Timesの報道姿勢―ダマスカス近くで爆発―
ダマスカスの爆発を報じた。報道によると、バブ・トゥーマ近隣の警察署を狙ったもので、少なくとも10人が死亡、何十人かが負傷したが、犠牲者が民間人か警察官かは不明であると述べた。
ブラヒミ特使は、犠牲祭中の停戦への協力を呼びかけるため中東諸国を訪問し、その後ダマスカスに到着した。長期停戦に繋がることを期待しており、イラン、イラク、トルコ、ドイツを含む一連の国はこれを指示しているが、シリア政府と反政府勢力はともに合意していない。
シリア外務省は停戦にはふれず、国内での包括的な話し合いの準備として、停戦への公平で理性的な環境作りについて議論したと話した。シリア政府軍と反政府勢力は過去に、国際的に求められ調印した停戦合意を即座に破っており、現在どちらにも停戦の兆しは見られない。
The Wall Street Journal―平和特使訪問中シリアに爆弾―
ダマスカスとアレッポの爆発を報じた。二日前には隣接するレバノンで治安機関幹部が死亡する爆発が起きている。
ダマスカスの爆発はテロであり、少なくとも13人が死亡、29人が負傷したとシリア内務相は述べた。日曜はシリアの少数派キリスト教徒の祭日でいくつかの教会で朝の集会を行っていた。爆発は警察署近くの公園周辺で起き、警察署では7月に起きた衝突でサンドバッグを備え政府軍を増設したばかりである。アルカイダと繋がりのあるものも含めたイスラム教徒のグループは、爆発原因はバブ・トゥーマの検問所設置であるとして政府の責任を追求している。
アレッポの遥か北では町の多くの場所で反政府勢力と政府軍の激しい戦闘が3ヶ月以上続いている。アレッポの爆発は病院の外で起きたが、教会に隣接しておりどちらを狙ったものか不明である。
政府軍が大砲、ガンシップ、軍用機でダマスカス周辺の反対派の孤立地帯を激しく砲撃し続けても、多くの住人・商人は平静で、表面上はアサド大統領に非常に忠実である。また、多くのシリア人キリスト教徒は反政府暴動で率先して穏健な立場をとっている。これらは、イスラム教過激派の台頭を恐れ、アサド大統領を支持しているものと見られる。
ブラヒミ特使の停戦要請に対し、アサド大統領は、危機解決へのあらゆる真摯な努力に応じるが、すべては欧米とアラブ諸国が「テロリスト(反政府勢力)」への援助をやめるかどうかにかかっていると述べ、反政府勢力指導者は、抑留者の解放、ホム中心部の軍包囲の終結、空爆・突撃の中止など5つの条件を政府が受け入れてくれれば停戦に応じると述べており、両者とも停戦への意思は見られない。