日中の軍事衝突は「現実的リスク」か 世界の有力者がダボスディナーで語る
安倍首相がダボス会議(世界経済フォーラム)で、日中関係を第一次大戦前の英独関係と似ていると認めたことについて、波紋が広がっている。今年は第一次大戦開戦100周年ではあるが、そうした発想が出てくる理由について危惧する意見を海外各紙は伝えている。
【実際に戦争になるのか】
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、ダボス会議の参加者たち(銀行家、経営者、政治家など)が、夕食時などにこの話題で盛り上がったことに注目している。
現代は当時と違って、滅多な衝突を始めると核戦争に発展する危険があり、日中とも困難な経済改革に注力している最中であり、さらに北朝鮮と言うワイルドカードもあって、最終的に、戦争の危険はゼロではないがそう高くもない、という見方に落ち着いたようだ。問題は突発的な事故がエスカレートし、国内のナショナリスト圧力に負けて引き下がれなくなる場合だという。
ただし、「世界経済を動かす人々の間で、全面戦争がリスク要因の一つとして議論されているという事実自体、困った兆候」であると同紙は指摘する。
【日本の戦略は、本末転倒との主張も】
歴史的背景から論じる識者もいる。ザ・ディプロマット誌に寄稿した「北朝鮮食糧政策ブログ」編集長Yong Kwon氏は、国家総力戦の時代となった第一次大戦でドイツが敗北したことを目の当たりにしたことが、日本を満州の資源獲得に走らせたと主張。長期戦に耐えるための領土拡張のはずが、その過程で対米戦含め、日本の資源と工業力を使い潰す長期戦に突入してしまったことは、本末転倒だったと論じる。
現在の日本も、防衛兵器製造を含めハイテク産業に必要な希少資源を中国に独占され、経済的安全性を脅かされている。だがそのために、強硬路線に訴えて周辺諸国の信頼を失うことは、これまた本末転倒だと同氏は主張する。
例えば野村證券の研究によると、日韓中三国間で自由貿易協定が成立すれば、日本の潜在GDP成長率を0.74%増加させる。これはTPPで予想される0.54%を上回っている。だが靖国参拝などで中韓を怒らせた結果、もはやそうした協定の予備交渉さえ不可能になってしまった。好戦姿勢はかえって日本の戦略的弱点を顕わにするのであり、「自滅的」だとのことだ。
【ヒーロー気取りの首脳ども、ロシア紙皮肉る】
また、ペペ・エスコーバー氏のロシア・トゥデイの記事は、安倍首相含めダボス会議の首脳たちは皆、自分の足元を見ようとしない、ヒーロー気取りの無能者であるとの過激な論調だ(徹頭徹尾皮肉に満ちており、文意が判りにくいほど)。
日本については、アベノミクスが消費税増税で「メッキを剥がされ」、「うさんくさい」特定秘密保護法を成立させ、「黒澤映画のサムライ気取り」で中国を悪役に仕立て、バンザイ(※玉砕突撃を意味する皮肉か)を叫んでいるのだと皮肉っている。