日本人が発見した5つ目の味「旨味」が世界で人気急上昇中

 4つの基本的な味、甘味、塩味、酸味、苦味は古くから世界中に知られていた。今日では、1908年に日本の化学者によって発見された「5つ目の基本味」である「旨味」が世界でにわかに注目を集めており、昆布や鰹節の生産者が積極的に海外展開を目指している状況だ。

【アメリカも注目する「旨味」】
 旨味は他の食材の風味を増す。海外サイト「オレゴニアン」は、旨味を食物にこくのある複雑な味を与える風味であると説明し、植物由来の旨味の二大宝庫としてフンギ茸と大豆発酵食品を挙げる。同サイトはベジタリアン向けの記事で「パン粉をつけて揚げた豆腐カツにマッシュルームの粉を加えたもの」を旨味を味わえるレシピとして紹介している。

 2010年には「umami」は、アメリカの食に関するトレンド・ワードに入っている。アメリカにはその名も「旨味バーガー (Umami Burger)」という店ができ、開店時には3時間待ちの大盛況だったとナショナル・ポストは伝えている。

【グルタミン酸を嫌悪するアメリカ人】
 旨味の主成分であるグルタミン酸ナトリウムは、ファストフードやスナックに広く使われているが、アメリカではMSG(グルタミン酸ソーダ)という別名でもよく知られている。

 MSGは日本からアジア、特に中国に広まり、アメリカでは中華料理店でよく使われた。1968年、ある医学誌に、中華レストランでの食事の後に体調不良が起こるという投稿が続いた。挙げられた症状は非常に様々だったが、同誌は「チャイニーズレストラン・シンドローム」と命名し、MSGを槍玉に挙げた。

 MSGの潜在的な危険性に関する調査が数多く行われたが、MSGと「シンドローム」の症状との関係性はほとんど見られなかった。現在では、アメリカ食品医薬品局をはじめ、イギリス、オーストラリアなどの当局は、MSGは安全な添加物であると判断している。

【旨味とMSGが似ていることを知った読者の反応は?】
 旨味とMSGはどちらもグルタミン酸であり、口内では同じレセプターで受容されるのだ。不当に忌み嫌われているMSGと崇め奉られている「旨味」が化学的に関連しているということはあまり知られていない、とナショナル・ポストは皮肉を述べている。

 この点に関する読者のコメントは以下の通り様々だ。
 ・60~70年代の他の調味料については言及なしか?
 ・(食品)工業は何にでも入れ過ぎなんだよ……塩と同じく。
 ・MSGが入ってるものを食べてるとして、それはブランドじゃなくて食物のタイプが悪いのさ。加工食品はカロリーが高すぎて肥満と糖尿病の元だ。買物カゴの中身の8割を生鮮食品にすればいいんだ。
 ・(上記コメントに対して)あなたは出張がないんだね、私みたいに出張ばかりだと、帰ってきたときには生鮮食品は冷蔵庫で腐ってることになるよ。ラベルを読むことを学べばいいのさ。

 また、「不当に忌み嫌われている? あれは毒だ!」というコメントに対しては、「因果関係はないという実験結果が出ているそうじゃないか」「体内にも存在すると書いてあるだろう」などと反論するコメントが付いており、MSGに対する感情的な反発は減りつつあるようだ。

コクと旨味の秘密 (新潮新書)

Text by NewSphere 編集部