米アマゾン、ドローンによる処方薬配達を試験的に開始
米アマゾンが空から処方薬を配送するサービスに乗り出している。電子商取引の大手が、薬のドローン配達を試験運用する最新の企業として名乗りをあげることになる。
同社は10月18日、テキサス州カレッジステーションの顧客は注文から1時間以内にドローン配達で処方薬を受け取れるようになったと発表した。
このドローンは安全な薬局のある配送センターから飛行するようにプログラムされ、顧客の住所まで移動し、高度約4メートルまで降下してからパッド入りのパッケージを投下する。
アマゾンによると、顧客はインフルエンザや肺炎など一般的な治療薬を含む500種類以上の薬から選ぶことができるが、規制薬物は含まれないという。
同社のプライム・エア部門は昨年12月、カリフォルニア州カレッジステーションとロックフォードにおいて一般的な日用品のドローン配送テストを開始した。広報担当者ジェシカ・バルドウラス氏によると、同サービスの開始以来、配達件数は数千件にのぼっており、今後は顧客の要望を踏まえた上で処方薬を取り扱う方向でサービスを拡大していくという。
アマゾンは10月18日、来年末までにアメリカ国内でさらに1ヶ所、そしてイタリアとイギリスの都市でもドローン配送を開始すると発表した。具体的な場所については、今後数ヶ月以内に公表するという。
アマゾンプライムではすでに、同社の薬局から一部の医薬品を2日以内に配送している。しかし、アマゾン・ファーマシー担当バイスプレジデントのジョン・ラブ氏によると、現状ではインフルエンザのような急性疾患に対応できないという。
同氏は「私たちがやろうとしているのは、どうすればスピードのカーブを曲げられるのか、を考えることです」と述べている。
アマゾンファーマシーのチーフ・メディカル・オフィサーであるヴィン・グプタ博士によると、アメリカの医療システムは全般的に急性疾患の迅速な診断および治療に苦慮しており、新型コロナウイルスのパンデミックを通じて現状が表面化したという。
グプタ氏は「診断から治療までの時間を短縮すれば、多くの治療が効果をあげることになる」と話す。
ドローンによる処方薬配送を模索する企業はアマゾンだけではない。ドラッグストアチェーンのCVSヘルスは2019年、ノースカロライナ州においてUPSと共同で配送テストを行った。ただしCVSの広報担当者は「すでに同プログラムは終了した」と述べている。
インターマウンテン・ヘルスケアで医療システムのサプライチェーン・ディレクターを務めるダニエル・デュアシュ氏によると、同社は2021年にソルトレイクシティ地域で処方薬のドローン配達を開始し、現在も拡大中だという。同社は物流会社のジップラインと提携し、ドローンを使い、パラシュートで荷物を投下している。
商業目的でドローンの活用を目指す企業にとって障壁となるのが、運用の安全性を確保したい規制当局の存在だ。アマゾンの創業者ジェフ・ベゾス氏は10年前「2018年までにはドローンによる配達が行われるようになるだろう」と予測していた。しかし、巨大電子商取引プラットフォームであるアマゾンがこの技術を使えるのは、ごく限られた一部の市場だけだ。
アマゾンもメンバーとされる業界団体、コマーシャル・ドローン・アライアンスのエグゼクティブディレクターを務めるリサ・エルマン氏によると、これまでのところ規制当局の承認は特定の地域に限定されており、その範囲や企業にとっての有用性という点でも限られているという。
とはいえ、同氏は「規制当局による認可数は増加している」と指摘する。9月、米連邦航空局(FAA)はジップラインおよびUPSに対し、より長距離のドローン飛行を許可した。
ウォルマートもまた、自社のドローン配送の拡大に取り組んでいる。
さらに10月18日、アマゾンはMK30と呼ばれる新型ドローンを発表した。来年末までに現行の宅配ドローンに置き換える予定だ。同社によると、新型ドローンはより遠くまで飛行し、より小型で静かなうえに配送能力も強化されているという。
同社のドローンは高度120メート近くまで飛行し、顧客の家に到着するとゆっくりと降下するという。ドローンは配達区域にペットや子供、その他の障害物がないことを確認してから、配達マーカーに荷物を投下する。
アマゾンはここ数年、ヘルスケア分野での存在感を高めている。
薬局を増設したほか、プライマリ・ケア・プロバイダーのワン・メディカルを買収するため、約40億ドル(約6000億円)もの資金を投じた。8月には、全50州でビデオ遠隔診療を開始したばかりだ。
By TOM MURPHY and HALELUYA HADERO Associated Press
Translated by isshi via Conyac