横行する象牙密輸、日本もその一因? 海外紙が指摘
アメリカ、フィリピンに引き続き、今月6日、中国が国内で押収された象牙6トンを破棄するセレモニーを行った。
国連に向けた声明文で、中国当局は「野生生物の貿易は深刻な問題となり、象牙と野生生物の不法な取引は増大し」ており、セレモニーは「人民の意識を高め、野生生物の不正取引と戦う中国の決定を表明する目的で」行われると宣言した。
◆絶滅の危機に瀕する象の群
象牙の問題点の一つは、再生産に時間がかかる生物から採られることだ。雌の象は5年おきにしか妊娠せず、一生の間に、最大でも8頭程度しか仔を産めない。この遅々とした再生産量では「持続可能な収穫」は不可能である。
象牙の輸出で得た外貨によって環境を保護するという考えもあるが、需要が供給を凌駕し、種としての象に絶滅をもたらすだろう。過去25年間に押収された牙は1本当たり8.5kgから4kg前後にまで落ちた。若い個体が密猟の対象となったこと、また、大型の牙を持つ象が遺伝子のプールから消え失せたことが現れているとカレドニアン・マーキュリーは伝える。
◆密猟との戦いを象徴するセレモニー
今回中国が行ったようなセレモニーは、1989年のケニアに始まる。セレモニーそのものは象徴的行為でしかないが、それで終わらず具体的な行動を伴った。ケニアのセレモニーはジンバブエ等の象牙輸出国に対する具体的な抵抗行為でもあった。積み上げた象牙から上がるオレンジ色の炎は世界に衝撃を与え、ワシントン条約(CITES)の締結と国際的な象牙禁輸をもたらしたとナショナル・ジオグラフィックは伝えている。
フィリピンの象牙破棄セレモニーに伴うのは、新しい野生生物不正取引に関する執行機関の発足と、象牙貯蔵庫を頻発する盗難から保護し得ないということの周知だ。アメリカは閣僚レベルでの野生生物不正取引に関するタスクフォースを組織し、また国内での象牙販売も禁止しようという動きがある。
◆象牙をめぐる中国の迷走
ナショナル・ジオグラフィックはまた、中国の象牙密輸の歴史を鑑みつつ警鐘を鳴らす。世界的な貿易禁止の後、密猟で大幅に減少していた象の個体数は回復し始めたが、2008年、CITES会議が日本と中国に102トンの輸入を許可したのををきっかけに、アフリカ-中国間での大量の密輸が始まった。象牙競売に当たっては中国と日本が値を吊り上げたため、安い正規の象牙で闇市場が損なわれることはなく、密輸は却って増加した。
中国当局の官僚は、アフリカの密猟問題は中国の象牙産業に責任があるということを繰り返し否定している。中国が、自然死した象の牙のみならず、押収された象牙を中国で販売することも許可するようCITES会議に求めたのは、まだ昨年のことだ。
今回の象牙破棄が示すのは、当局の官僚が考えを変えたのか、あるいは、それより高位のものが耳を傾けているのだろうかと、ナショナル・ジオグラフィックは中国の動きに注目している。