“原発災害は終わっていない”一人闘う福島のカウボーイに海外紙注目
日本政府が福島原発事故の真実を隠そうとしていることに腹を立て、吉沢正巳は、人ひとりいない、警戒区域にある牧場に戻った。何百頭という見捨てられた牛を政府の屠殺命令から守るためだ。ニューヨーク・タイムズ紙が報じた。
【福島を忘れさせない】
「牛たちは、福島における人間の愚行の生きた証」とニューヨーク・タイムズ紙に彼は語っている。「政府はここで起きたことを消し去り、日本を原発前の状態に戻そうとして、牛を殺したがっている」とも述べている。
牧場近くの放射線量は政府が避難区域として指定するレベルの1.5倍相当に達しているという。しかし、彼は自らの健康よりも、日本が原発のトリプルメルトダウンを忘れてしまうことの方を心配している。経済が回復の兆しを見せ、東京が2020年のオリンピック開催都市に選ばれる中、原発への関心が薄れつつあるという。原発の安全性に関し、意見も様々だ。
【状況はコントロールされている?】
日本政府によると状況はコントロールされている。2013年9月、安倍晋三首相は「さらに完全に問題のないものにするため抜本解決に向けたプログラムを決定し、着手している」と語った。
これに対し、ニュース専門局アルジャジーラは、原発災害は続いているとして、以下のように報道している。
最も切羽詰まった問題は、損壊した4号機のプールに危険な状態で格納されている使用済み核燃料棒である。東電は先月、400トンにのぼるウランを含む1300以上の核燃料棒を安全な場所に移送するという、危険な作業に着手した。大規模な地震が再度発生した場合、新たな放射線災害が発生する危険があると、専門家は指摘している。
最も頭の痛い問題は、1~3号機にある何百トンに及ぶ溶融放射性物質である。溶融ウランを冷却するのに使用した汚染水を貯めるタンクが何千と建てられたが、すでに場所が足りなくなってきている。
さらに地下水の問題がある。昨年9月、東電はついに、オリンピック・プール規模の水量の汚染地下水を太平洋に毎週放出していることを認めた。福島第一原発では、毎日700トンの汚水が発生している。東電は、汚染水を抑制するため、原発の周辺に470百万ドルの巨大な凍土壁を建設し、汚染水を処理する新システムを設置する計画である。
問題は東電が汚染水を安全なレベルまで処理できるのかということである。「東電がストロンチウム90を除去せずに汚染水を放出するなら、太平洋にとって大問題となる」と気象庁気象研究所の青山道夫氏は述べている。これら全ての問題が解決したとしても、福島第一原発は未処理の爆発物のようなものだ。政府は、原発解体には30年から40年かかるとしているが、その間常に新しい問題が発生する可能性がある。