靖国参拝、なぜ今? 自滅、無益・・・海外コラムニストの批判厳しく
安倍首相が26日、靖国神社を参拝した。現職首相としては2006年の小泉首相以来であり、安倍首相自身、2006~2007年の1期目にも参拝してはいなかった。安倍首相は政権発足後1年間にしてきたことの報告が目的だとして、「人々が戦争で破滅に苦しむことがない時代を作ることを誓約」「中国や韓国の人々の気持ちを傷つけるつもりは全くありません」などと語っている。
海外メディアのオピニオン記事は、揃って、なぜ今靖国参拝なのか、と書いている。
【毛沢東120歳の誕生日に挑発】
ザ・ディプロマット(日本誌)は、「やや皮肉な読みとして」、この日が毛沢東生誕120周年であるのを見計らって故意にぶつけた可能性を示唆した。ただし同誌は比較的、参拝の政治的意図を理解できるとする論調だ。
それによると、首相は靖国神社のデリケートさは理解しており、そのため1期目には参拝を控えて、中韓との関係改善に努めた。しかし「経済政策戦線での成功」により自民党は衆参両院を固め、尖閣・中国防空圏問題により国内での反中感情も強まって、1期目には不可能だったことにも可能性が見えてきている。その機会に首相の民族主義姿勢を売り込んで、「支持者も反対者も」取り込む狙いなのだという。
【「無益」「自滅」・・・耳を疑うアメリカ人】
それに対しブルームバーグは「何を考えているのか?」、アトランティック誌は「今晩のニュースを、最初私は信じなかった・・・東アジアのデリケートな状況をずっと、ずっと悪化させることは判りきっている」など、全く信じがたい下策との評価だ(なおバイデン米副大統領も先日、訪日時に参拝回避を支持していた)。
ブルームバーグは日中両方の対決姿勢を、地域の危険を増しただけであり「無益」だと評する。経済改革という背景や強硬派支持者への手土産という、まさにザ・ディプロマットの述べているような主張には、「楽観主義者」だとして真っ向から否定的だ。
同メディアは、1978年の戦犯合祀以来、天皇でさえ参拝は避けてきたこと、タイミングが悪すぎること、日中とも経済改革が所得増のような実成果に至っていないこと、両国の強硬姿勢が意図通りの結果になっていないこと、などを指摘する。例えば、アメリカの太平洋支配を押し返す目的だったはずの中国の防空識別圏宣言はかえってアメリカの介入強化を招き、日本は韓国とも不和なため、もっと危険な北朝鮮に対して協調行動を期待できなくなっている、という。
アトランティックは、対中緊張の中で日本首相が靖国神社を訪問するというのは、イスラエルと意見の相違があるドイツの首相がアウシュヴィッツを訪問することや、アメリカの白人政治家が全米黒人地位向上協会の見ている前でリンチ現場を訪問することとは違う、と表現した。ただ、靖国神社併設の遊就館で「日本はアメリカの経済・軍事的包囲によって第二次世界大戦を強いられた」と説明されている点が、中韓だけではなくアメリカから見ても反発を招くともしている。同誌は、中国の防空識別圏宣言よりも日本こそ「自滅ソフトパワーの新チャンピオン」に値すると評した。