中国、H10N8型鳥インフルで初の死者 45人犠牲の別型こそ危険との指摘も
H10N8型鳥インフルエンザの、鳥から人への初の感染者となった73歳の女性が、6日、中国江西省で死亡した。
台湾の疾病管制署(CDC)によると、直接の死因となったのは呼吸不全と血圧低下による急性循環不全だ。女性には重い肺炎、高血圧症、心臓病、筋無力症などの持病があり、11月30日より同地の病院に入院していた。
世界保健機関(WHO)の調査によると、女性は生きた家禽などを扱う市場をたびたび利用し、発症の4日前にも訪れていたという。
【人への感染リスクは低いと専門家の見解一致】
今後、人への感染が続くことが懸念されるH10N8型だが、もともと、人への感染力はそれほど高くない、というのがCDCの周志浩副署長の見解である。台湾のチャイナポスト紙の記事によれば、同ウィルスはこれまでに日本、韓国、アメリカを含む各国の渡り鳥、家禽からも見つかっており、病原性は低いが、人間が感染した場合、重い症状を引き起こすことがあるという。
とりわけ、人から人への感染力は高くないというのが、現段階での専門家のおおむね一致した見方である。CNNは、中国国家衛生・計画生育委員会が「今回の死亡事例は個別的な症例であり、現時点での分析によれば人への感染の危険性は低い」と発表したことを取り上げている。
香港のサウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙は、中国国有の製薬会社・上海生物製品研究所の研究部門の陳則教授が、2007年にH10N8型ウィルスの分離に成功し、マウスを使った動物実験で哺乳類への感染性があることを証明したと報じる。同教授によれば、ウィルスが人への感染性と哺乳動物間の感染性をもつことは確かだが、人から人へ感染するかは現時点では不明であるという。
【H7N9型はH10N8型より怖い?】
専門家らは、H10N8型以上に、中国ですでに拡大の兆しを見せているH7N9型により一層注意することを呼びかけている。
香港大学で公衆衛生学を担当する潘烈文・准教授は、H10N8型による感染が今後拡大していく懸念は少ない、とCNNに語った。一方で、今年3月に中国で最初に報告されたH7N9型は、すでに中国で100人以上、香港で2人の感染者を出している、と警告。H7N9型は重症化しやすく、すでに45人が死亡していることを付け加えた。
ウィルスの温床となっている、生きた家禽を扱う市場を閉鎖するべき、と専門家らは口をそろえる。香港の同種の市場では、すでに生きた家畜や家禽が取り扱われなくなってきているが、中国江西省ではいまだに取り扱いが続いている、と香港のサウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙は報じる。
なお台湾のCDCは18日付で中国への渡航情報を「警戒」レベルに引き上げた。