中国への配慮か 日・ASEAN声明は「妥協の結果」と海外紙分析
日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)の交流40周年を記念した東京サミットでは、「上空通過の自由と民間航空の安全」への協力を誓う声明が発表された。一方で日本は、今後5年間に東南アジア諸国への援助や融資、2兆円を約束した。
安倍首相は就任1年足らずですでにASEAN全10ヶ国を訪問するなど、ASEAN諸国との関係強化を重視してきた。各紙は、東シナ海や南シナ海で自己主張を強める中国を封じ込めようとする、日本(とアメリカ)の戦略の一環と報じている。
【中国影響圏に食い込む日本マネー】
13日には麻生財務相が、インドネシア・フィリピンとのスワップ協定を拡大し、2年前に期限が切れたシンガポールとのスワップ協定も復活させるとも発表した。マレーシアやタイとも同様の協定締結を目指しているという。スワップ協定は通貨危機時の「セーフティネット」であるが、フィナンシャル・タイムズ紙によると、日本の当局者は政治的動機を認めている。
また15日、安倍首相はミャンマーのテイン・セイン大統領と会談し、ダウェイ工業地帯開発プロジェクトなどへの開発支援を約束した。ミャンマーへの投資はいまだ中国が突出しており、中国影響圏にあると言える国である。しかしウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、2年前ミャンマー軍事政権が選挙を認めて国際経済封鎖を緩和されて以後、日本はミャンマーへの投資に積極的だ。一方で中国は環境破壊ばかりして資源を掘り出すことしか頭にない、との批判がミャンマー国内で増大しており、中国によるミッソン・ダム建設計画がキャンセルされるなど、中国投資は減少傾向にあるという。
安倍首相は他に、ベトナムなどへの支援も表明した。首相は、日本の成長を促進するアベノミクス政策はASEANの利益になり、ASEANの成長も日本にとって有益であると説いた。
【とはいえ本気で中国には盾突けないASEAN諸国】
しかし同紙の別の記事は、個別に中国との領土紛争を抱えてもいるとはいえ、いまだ中国との経済関係が深いASEAN諸国は、日本に肩入れし過ぎて中国に睨まれることを恐れていると指摘する。特にカンボジアは中国擁護姿勢が強いようである。
記事によれば、サミット声明は、中国防空圏問題に明確に言及したい日本と、そこまで対決姿勢を鮮明にしたくはないASEAN諸国との、妥協の結果だという。
サミットでは、災害救援などの「非伝統的安全保障問題」の連携強化のため日本・ASEAN国防大臣会合が呼びかけられた。また、「自衛隊の役割拡大」についても議論され、「ASEANの指導者たちは日本の取り組みを楽しみにしていた」と声明されている。