武田薬品、230年の歴史で初の外国人社長 海外紙は日本企業の閉鎖性を未だ懸念

 国内製薬最大手の武田薬品工業は11月30日、次期社長として、クリストフ・ウェバー氏を招聘することを決定したと発表した。2014年4月までにCOO(最高執行責任者)として入社し、6月下旬に開催する定時株主総会と取締役会の承認を経て、長谷川閑史社長の後任として正式にCEOに就任する予定だという。

 ウェバー氏(フランス出身)は現在、英製薬大手グラクソ・スミスクライン(GSK)のワクチン社社長とバイオロジカルズ社のCEOを務めている。2008~2010年の間、シンガポールにあるGSKのアジア太平洋地域担当上級副社長を務めるなど、7ヶ国での仕事経験がある。

 長谷川氏は、ウェバー氏のグローバルな営業やマーケティングなどの経験を評価しており、「(同氏の)幅広い事業経験と高い実績は、今後のグローバル戦略のさらなる強化と加速化に大いに貢献してもらえると期待している」、とコメントしている。

【背景には少子高齢化】
 フィナンシャル・タイムズ紙は、日本の少子高齢化が武田薬品の思い切った行動の背景にあるのではと報じている。高齢化に伴い、医療コストの上昇を懸念している政府から薬の値下げを要請されたり、後発医薬品との価格競争により値下げを余儀なくされるなどの危機感が背景にあるようだ。

 長谷川社長は、フランソワ・ロジェ氏をCFO(最高財務責任者)に、フィリップ・ダンカン氏をCPO(最高調達責任者)として迎え入れるなど、積極的にグローバル化を推進している。

 同社は、08年に米バイオベンチャーのミレニアム・ファーマシューティカルズを、11年に新興国に販路を持っているスイスの製薬大手ナイコメッドを買収し、世界70ヶ国以上に自社販売網を持っている。

 今では売上高に占める海外比率が5割を超え、約3万人の従業員のうち、約2万人は外国人であるという。

【海外紙は未だ日本企業の閉鎖性を懸念か】
 一方でニューヨーク・タイムズ紙は、グローバル化のために外国人経営者を招聘した日本企業の中には、失敗もあったことを報じている。日本板硝子の2人の外国人CEOが相次ぎ辞任したことや、ウッドフォード氏が不祥事を告発したオリンパスなどを例に挙げた。

 同紙は、長年にわたる人間関係に重点を置く、“島国根性”の企業文化が、会社を変えようとする外国人にとって大きな障害になる、というアナリストがいることを報じている。

Text by NewSphere 編集部