ギリシャ神話「オリュンポス十二神」一覧|文化に影響を与えた神々を知る
ギリシャ神話には数多くの神々が登場する。中でも「オリュンポス十二神」と呼ばれる十二柱の神たちは、絵画や彫刻など古代・中世の文化だけではなく、音楽・映画・アニメ・ゲームと現代のカルチャーにも多大な影響を与えてきた存在だ。
本記事では、ギリシャ神話の中心となるオリュンポス十二神の一覧と、さまざまなシンボルとなった、その他の神を紹介する。
目次
ギリシャ神話「オリュンポス十二神」の男神一覧
最初にオリュンポス十二神のうち、男神の6柱を紹介する。
ゼウス|オリュンポスの主神であり全知全能の最高神
ギリシャ語/英語表記 | Ζεύς/Zeus |
シンボル | 天空、天候、宇宙、雷 |
ギリシャ神話の主神で全知全能の存在。天空神として宇宙・天候を支配するほか、雷が象徴であり武器でもある。また、古代オリンピックはゼウスを讃えるための大きな祭であった。
最高神でありながら好色家としても知られ、正妻ヘーラーだけではなく多くの女神、人間の女性と交わり、たくさんの子をもうけた。ゼウスと人間との間に生まれた英雄には、ヘーラクレースやペルセウスなどがいる。
ポセイドーン|海洋を司るゼウスに次ぐ高位の神
ギリシャ語/英語表記 | Ποσειδῶν/Poseidon |
シンボル | 海洋、地震、地下水、泉 |
別名 | ポセイドン、ポセイダーオーン、エノシガイオス |
海と地震を司る神で、ゼウスの兄にあたる。主に海や地下水を支配するが、海に浮かぶ大陸すらポセイドーンの力で支えられているという。
「海のゼウス」と呼ばれることもあり、神としての力はゼウスと肩を並べるほど。さらに海だけではなく、その支配力は全物質に及ぶ。弟に負けず劣らず多数の愛人を作っており、その中には有名なメドゥーサがいる。
アポローン|弓の名手にして芸能と芸術の神
ギリシャ語/英語表記 | Ἀπόλλων/Apollon |
シンボル | 光明、芸能・芸術、羊飼い、予言 |
別名 | アポロン、アポロ |
ゼウスの息子で、芸能・芸術を司る神。女神アルテミスとは双子だとされている。弓矢の名手としても知られ、戦いでは数々の兵士を倒したという。ボクシングを作り出した神としても知られる。
のちに、太陽神ヘーリオスと同一視されるようになり、光明の神とされたほか、羊飼いをはじめとする牧畜の神、予言の神など非情に多くの側面をもつ。一方で、人間に疫病を広める疫病神の顔も持ち合わせている。
アレース|戦場の狂気と戦いを司る荒ぶる神
ギリシャ語/英語表記 | Ἄρης/Ares |
シンボル | 戦い |
別名 | アレス、アレウス、アーレウス |
ゼウスとヘーラーの間に生まれた戦いの神。「戦い」の中でも、とくに戦闘における狂乱と破壊を現しており、オリュンポス十二神の中ではやや人気が低く、神々からの信用度も高くない。
ただ、美の女神アプロディーテーの恋人であり、ギリシャ神話に登場する男神の中でもトップクラスの美貌を誇る。好戦的なイメージから火星と結びつけられ、火星の衛星フォボスとダイモスは、アレースの息子ポボスとデイモスに由来している。
ヘーパイストス|自らの工房をもつ炎と鍛冶の神
ギリシャ語/英語表記 | Ἥφαιστος/Hephaestus |
シンボル | 炎、鍛冶 |
別名 | ヘパイストス、ヘファイストス、ヴァルカン |
ゼウスとヘーラーの息子で、武具作りが得意な炎と鍛冶の神。最高神と正妻の第1子ながら見た目が醜く、とくにヘーラーから冷遇されていたという話がある。
神々の武器や防具を作ったほか、「パンドラの箱」で知られる人類初の女性パンドーラーも彼が作ったとされる。女神アプロディーテーが妻といわれているが、彼女からもその醜さで好かれていなかったという。
ヘルメース|商人や旅人に愛される神々の伝令使
ギリシャ語/英語表記 | Ἑρμῆς/Hermes |
シンボル | 旅人・商人、流れ、雄弁、計略、発明、学術 |
別名 | ヘルメス |
ゼウスをはじめとする神々の伝令使。神から神へ、ときには人間へと言葉を伝える役割をもつことから、「流れ」に関わるものを司るとされている。そのため、各地を移動する商人・旅人の守護神であり、さらには学問や弁舌といった幅広い信仰の側面をもつ。
ヘルメスの杖とも呼ばれる「カドゥケウス」は、超自然的な力があるという。2匹の蛇がらせん状に絡む姿は、医療や交通、学術のシンボルとして現在でもよく使われている。
ギリシャ神話「オリュンポス十二神」女神一覧
続いて、オリュンポス十二神の女神6柱を紹介する。
アテーナー|知恵と戦略を司る都市の守り神
ギリシャ語/英語表記 | Ἀθηνᾶ/Athena |
シンボル | 戦い・戦略、知恵、芸術・工芸、都市守護 |
別名 | アテナ、アテネ |
知恵と戦略から芸術・工芸まで司る、オリュンポス十二神でも人気が高い女神。父ゼウスからも大変かわいがられており、あまたいる子どもたちの中でも一番のお気に入りだった。アレース同様に「戦い」を司るが、こちらは都市の平和を守るための戦略を与えるとされている。
かつて、ギリシャに多数あった要塞都市の守護女神でもあり、現在のギリシャの首都アテネも彼女の名に由来する。神話では戦いの女神らしく気が強い描写がある反面、戦いに挑む英雄たちには親切にしている場面が多い。
アプロディーテー|愛・美・性を司る美しき女神
ギリシャ語/英語表記 | Ἀφροδίτη/Aphrodite |
シンボル | 愛、美、性、生殖、豊穣 |
別名 | アプロディタ、アフロディテ、 アフロディーテ、アフロダイティ |
愛と美、性を司る女神で、神の中でもっとも美しいとされている。叙事詩によりその出自は異なるが、いずれも美しい容姿に反して気が強い一面をもつ女神として描かれる。
ほかの女神と美しさを比べ合って戦争のきっかけを作ったり、醜い夫を嫌って浮気したり、美少年の養育権を奪い合ったりと、現代的な美しさとはかけ離れた神話も多い。現在も多数残される、彼女をモチーフにした美術作品からは想像できないエピソードである。
アルテミス|狩猟が得意な月の女神
ギリシャ語/英語表記 | Ἄρτεμις/Artemis |
シンボル | 狩猟、貞潔、月 |
アポローンと双子とされる、狩猟と貞潔を司る女神。アポローンとともに弓を得意としており、森の動物を従えた若い女性の姿で描かれることが多い。神話では、猟師オーリーオーンとの悲恋が有名。
月の女神セレーネーと同一視され、さらには生まれてすぐ母のお産を手伝ったこともあり、女性の出産を司る月の女神としても知られる。そこから転じて妊婦の守護神、子どもの守護神ともいわれる。
デーメーテール|穀物栽培を伝えた豊穣の女神
ギリシャ語/英語表記 | Δημήτηρ/Demeter |
シンボル | 豊穣、大地 |
別名 | デメテル、デーメーテール・テスモポロス |
ゼウスの姉にあたる豊穣の女神。穀物の栽培方法を人間に伝えたとされている。温厚な性格だが、怒ると地上に「飢餓」をもたらす。彼女から、いくら食べても満足できない飢えを与えられた人間の王が、最後は自分の体を食べて死んだという神話もある。
デーメーテールへの信仰は比較的歴史が古く、ローマ神話のケレース(ケレス)と同一視されたことで、絵画・彫刻などの美術作品のモチーフとしても広まった。
ヘスティアー|炉と祭壇を司る家庭・国家の神
ギリシャ語/英語表記 | Ἑστία/Hestia |
シンボル | 炉・暖炉、かまど、家庭・家族、国家秩序 |
別名 | ヘスティア |
炉や家庭、国家の秩序を司る女神で、ゼウスの姉妹。古代ギリシャでは炉が家の中心とされたことから、家庭の守護神として親しまれてきた。常に炉がある家の中心にいるため神話での出番は少なく、争いへの介入もしないのんびりした女神の印象だ。
また、彼女に代わりディオニューソスが十二神に加わることがあるが、これは甥にあたるディオニューソスを哀れんでのことといわれている。
ヘーラー|結婚と貞節・母性を司る嫉妬深きゼウスの妻
ギリシャ語/英語表記 | Ἥρα/Hera |
シンボル | 結婚、母性、貞節 |
別名 | ヘラ、ヘレ |
結婚や貞節を司る、ギリシャ神話における最高位の女神でゼウスの正妻。ゼウスとは永遠に結ばれた夫婦であり、お互い位の高い神ではあるが、ケンカしたり口論したりすることが多く、夫婦仲がよいわけではなさそうだ。
また、非常に嫉妬深く、ゼウスに離婚を迫ったり、ゼウスの浮気相手を酷い目にあわせたりする描写が多い。浮気相手やその子ども、浮気を手助けした者に対し、さまざまな怪物を仕向けることもある。
さまざまな由来になったギリシャ神話の神々
広く知られるオリュンポス十二神以外にも、有名なギリシャ神話の神は多い。その中から、ゼウスの兄弟ながら十二神に数えられない神のほか、さまざまなものの由来になっている神の一部を紹介する。
カオス|すべての始祖で原初の神
ギリシャ語/英語表記 | Χάος/Chaos |
シンボル | 何もない空間 |
ギリシャ神話の原初神。最高神ゼウスの母や祖母にあたる神を生み出した存在で、ギリシャ神話に登場する神々や英雄たちにとっては祖先にあたる。配偶神はなく、タルタロス・ガイアなど5柱の神を生み出した。
何もない空間を意味するほか、現在よく使われる「混沌」や「無秩序」といった意味合いをもつ。
ハーデース|冥界を統べるゼウスとポセイドーンの兄
ギリシャ語/英語表記 | Ἅιδης/Hades |
シンボル | 冥府神、地下、鉱物資源 |
別名 | ハデス、プルートーン、クリュメノス |
ゼウスの兄にあたる冥界の神。いつも地底にある冥界で過ごしているため十二神には含まれないことが多いが、その実力はゼウスやポセイドーンにも並ぶ。
のちに妻となるペルセポネーを地上から略奪するも、彼女のことは大切に扱っていた。女性好きが多いギリシャ神話男神の中では女性の扱いに慣れていないようで、恋した彼女にどうアプローチしていいかわからなかったらしい。
ペルセポネー|四季が始まった冥界の女王
ギリシャ語/英語表記 | Περσεφόνη/Persephone |
シンボル | 冥界の女王、ザクロ |
別名 | ペルセフォネー、ペルセポネ、 ペルセフォネ、コレー |
ハーデースの妻で冥界の女王とされる女神。神話では夫の側にいる姿で描かれることが多いが、のちに夫の恋人への嫉妬、美少年を公然と恋人にするなど、ギリシャ神話の女神らしさも現れてきた。
ゼウスに襲われたデーメーテールから生まれた娘で、のちに1年の3分の1を冥界で、それ以外を地上で暮らすようになる。ペルセポネーが冥界にいる間は母が嘆き、地上に実りをもたらさなくなったことが冬の始まりだといわれている。
ディオニューソス|豊穣とワイン、さらに酩酊の神
ギリシャ語/英語表記 | Διόνυσος/Dionysos |
シンボル | 豊穣、ブドウ酒、酩酊 |
別名 | ディオニュソス、デオニュソス、バッコス |
豊穣とブドウ酒、酩酊を司る神。炉の女神ヘスティアーに代わり、オリュンポス十二神に数えられることがある。ゼウスと人間の女性の間に生まれ、ヘーラーの嫉妬によって彼が生まれる前に母親が焼死するなど複雑な生い立ちとなった。
ブドウ栽培とワインの製法を伝授しながら各地を放浪し、多くの信者を獲得して神として認められる。彼が獲得した信者は女性が多く、いずれも非常に狂信的であったという。
キュクロープス|優れた鍛冶の技術をもつ一族
ギリシャ語/英語表記 | Κύκλωψ/Cyclops |
シンボル | 鍛冶 |
別名 | キュクロプス、サイクロプス |
卓越した鍛冶の技術をもつ、下級神の巨人一族。神としての歴史は古く、ゼウスが最高神になる前は父神に嫌われ拘禁されていたという。解放されてからは、十二神の一柱で鍛冶を司るヘーパイストスのもとで鍛冶を手伝っていた。
1つ目の巨人として描かれることが多く、キュクロープスをモチーフとした怪物伝説もある。しかし、1つ目である理由は諸説あり、定かではない。
テミス|法と掟を司る予言の女神
ギリシャ語/英語表記 | Θέμις/Themis |
シンボル | 法・掟、予言 |
法と掟を司る女神。「正義の女神」と呼ばれることも多く、現代でも裁判所など司法に関わる場所でモチーフとして用いられている。オリュンポス十二神の時代になると多くの神がその地位を失ったが、彼女だけは変わることなく地位を維持した。
天秤と剣を掲げた姿は、ローマ神話の女神ユースティティアと同一視されたものと思われる。ユースティティアの名は、英語で正義を意味する「Justice」の語源でもある。
プロメーテウス|人間に火を与えたティーターン
ギリシャ語/英語表記 | Προμηθεύς/Prometheus |
シンボル | 火 |
別名 | プロメテウス |
ギリシャ神話の古代神とされるティーターンの子孫。ゼウスが人間から火を取り上げた際、寒さに凍える人間を哀れに思い、ゼウスから火を盗んで人間に与えたとされている。
ゼウスを騙したギリシャ神話におけるトリックスターでありながら、のちに人間に災厄をもたらす女性・パンドーラーを作らせたきっかけでもある。ただし、人間を創造したという話もあり、人類に文化を与えた側面が強い。
ギリシャ神話の神を知ればもっと視野が広がる
ギリシャ神話に登場する神々は、アニメやゲーム、映画などのモチーフとなっていることが多い。ギリシャ神話の神々を知れば、キャラクターやストーリーに深さが感じられ、作品をより楽しめるだろう。本記事で紹介したほかにも数多くの神や怪物がいるので、ぜひ調べてみよう。
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