“まるでナチス”北朝鮮収容所、国連が指導者訴追へ? しかし裁けるかは中国次第
国連の北朝鮮人権調査委員会は17日、北朝鮮の人権侵害に関する報告書(372ページ)を公表した。あわせて、北朝鮮の指導者らを国際刑事裁判所(ICC)で裁くべきだと国連に勧告した。
同報告書には、「粛清、殺人、奴隷化、拷問、監禁、強姦などの非人道的行為」の実態があげられている。東京やソウル、ロンドン、ワシントンで80人前後の脱北者らに行った公聴会と、240回余りの秘密のインタビューを通じ、1年にわたる調査の末まとめられた。
同委員会のカービー委員長は、行動を起こすべきは“今だ”と強調し、我々は知らないではすまされないと国際社会に訴えた。一方、北朝鮮は「全くもって受け入れられない」と反発した。
【 収容所は「地獄絵図」 】
『NY Daily News』によると、北朝鮮の収容所の残虐行為はナチス・ドイツを彷彿とされるものがある、と以下を紹介している。
例えば、「ハト拷問」というものがある。両腕を後ろで縛り、地面から60cmの位置にある壁に設置された器具に手かせのように縛り、立つことも座ることもできない耐え難い体勢にする拷問のようだ。人によっては、3日3晩耐え続けることを余儀なくされる、と収容者は発言している。
想像を絶する恐怖はこれだけではない。収容者はネズミやヘビを食べて飢えをしのぐ。女性収容者は強姦されたり、出産後の新生児を殺すよう強要されている。飢えや拷問などで亡くなった収容者の死体は焼かれ、肥料にされているとのことだ。
さらに、中国に密入国し松茸を売っただけで、強制送還されて拷問を受けたり、小型ラジオを所有しているだけでスパイ容疑にかけられたりと、ゾッとするような出来事が記載されている。
政治犯収容所では、8万~12万人が収容されているとみられる。
【 国際刑事裁判所(ICC)で裁けるのか 】
ICCへの訴追には、安保理常任理事国すべての同意が必要となる。しかし、北朝鮮の同盟国である中国はこれに反発している。
香港のサウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙によると、中国は、対話と協調で人権問題は解決されるべきであり、ICCに提訴しても人権問題は改善につながらないと述べているという。
ICCは「集団殺害犯罪」、「戦争犯罪」、「人道に対する犯罪」などを犯した個人を起訴することができる、国連から法律的にも機能的にも独立した国際機関だ。これまで、スーダンのオマル・バシール大統領の逮捕状の発行や、コートジボワールのローラン・バグボ前大統領を「人道に対する罪」で逮捕・収監している。
中国外交部の劉振民副部長が、17~20日ま、で定例交流で訪朝している。中国が拒否権を発動すれば、ICCへの提訴が不可能になることから、今後の中国の行動が注目される。