北朝鮮ミサイルを撃ち落とす、米が初のICBM迎撃実験へ 現実的ではないという批判も
29日の朝、北朝鮮の弾道ミサイルが日本海の日本の排他的経済水域に落下し、ミサイル発射はこれで3週連続となった。アメリカは、北朝鮮が米本土に到達する大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発にいずれ成功すると見ており、30日にICBMの迎撃実験を行うと発表しているが、防御のみでは限界があるという声も聞かれる。
◆3週連続発射。アメリカへの間接的挑発か?
29日のミサイル発射は、14日、21日に続くもので、新潟県佐渡島から約500キロ、島根県隠岐諸島から約300キロの日本海に落下した。韓国軍は、ミサイルをスカッド系列と推定している。韓国聯合ニュースは、一連のミサイル発射はトランプ政権に対する挑発の意味があるとしており、ICBMや中距離弾道ミサイルではなく、スカッド系列を使うことで、アメリカを「直接的に刺激しないものの挑発を続け、緊張状態を維持する戦略と見られる」と報じている。
毎週のように続く北朝鮮のミサイル発射には、アメリカも神経をとがらせている。ロイターによれば、米国防情報局のビンセント・スチュワート長官は、このままでは米本土を狙うことが可能な核弾頭を搭載したミサイルを北朝鮮が作り上げることは明白と米上院聴聞会で発言している。米シンクタンク「38ノース」のミサイル専門家、ジョン・シリング氏は、2020年までには北朝鮮は米本土を射程にいれたICBMを開発し、2025年までには発射の兆候が捉えにくい固体燃料を使用したものを開発するだろうと見ている(ロイター)。
◆ICBM迎撃は困難。成功率は低い
高まる北朝鮮の脅威に対処するため、アメリカミサイル防衛局は、初のICBM迎撃実験を30日に行うと発表した。実験は、マーシャル諸島クェゼリン環礁のレーガン試験場からICBMの試験標的を打ち上げ、太平洋上を飛行している間に、カリフォルニアのバンデンバーグ空軍基地から撃墜弾で迎撃するものだ。アメリカはこれまでに17回のミサイル迎撃実験を行っており、そのうち9回成功している(米ABC)。
この実験に対し、ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)は疑問を呈している。同紙は、超高速で飛行する弾頭を迎撃するのは弾丸を弾丸で撃ち落とすようなもので、オバマ政権時代にこれまでのミサイル防衛は不十分と結論づけられ、サイバー攻撃や電子戦を含むプログラムが始まったと説明している。国防総省で兵器試験運用評価局長を務めたフィリップ・コイル氏は、これまでの迎撃実験の成功には、かすめたものも含まれており、これを除けば失敗率は67%だとNYTに説明している。
さらに、迎撃実験には台本があるため、実際の戦時のパフォーマンスはそれより劣るという指摘もある。実験用のミサイルは常にクェゼリン環礁から発射されるが、北朝鮮は移動式のミサイルを持っている。また、燃料注入時に偵察機や衛星で探知されやすい液体燃料ではなく、固体燃料が使用されるなら、攻撃のための準備時間は数時間から数分にまで短縮されてしまうということだ(NYT)。
◆攻撃は最大の防御。北への先制攻撃のほうが現実的?
ICBM迎撃が技術的に難しいことから、ナショナル・インタレスト誌に寄稿した豪ラ・トローブ大学の研究者、アダム・カボット氏は、外交的圧力や経済制裁が失敗に終わるなら、アメリカと同盟国には軍事行動以外に選択肢はほぼないと述べる。同氏は、米、中、露などのICBM能力を保有する国は、先制攻撃をすれば得るものより失うものの方が大きいことを理解しており、それが核時代の戦争の抑止力となってきたと述べる。しかし北朝鮮の場合は、先制攻撃の手段として核・ミサイル開発を行い、公然と核攻撃でアメリカを壊滅させると脅しており、無責任かつ理性のないこの国に抑止の考えを期待するのは大きなギャンブルだと断じる。
同氏は、北朝鮮をなだめ、核・ミサイル開発を続けさせるのは無責任極まりないとして、「攻撃は最大の防御」ということわざこそ今の状況に当てはまると主張。決して先制攻撃を擁護するわけでもなく、韓国や日本が北朝鮮の攻撃を受ける可能性を無視するわけでもないが、迎撃に莫大な費用をかけて守ろうとするのは現実的ではない、と述べる。むしろ北朝鮮による報復の度合いなど先制攻撃における本来の危険性や、北朝鮮が応戦する前にすべてのICBMを見つけ出して破壊する能力などが取り組むべきで課題で、迎撃が解決策にはなり得ないとしている。
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