KKK元指導者が上院選出馬へ 「トランプ氏の『アメリカ・ファースト』は私が元祖」
白人至上主義を掲げる「クー・クラックス・クラン(KKK)」の一派の元最高幹部、デビッド・デューク氏が、ルイジアナ州から上院選に出馬すると発表した。同氏はマイノリティの権利が過剰に保護され、欧州系アメリカ人が犠牲になっているとし、「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ氏の排外主義的政策にも共感している。デューク氏は共和党員として登録しているが、党関係者は、同氏を支持しない考えを一斉に表明した。
◆ネオナチ、白人至上主義者だが、政治には関心が高い
デューク氏は66才。APによれば、過去に自身がナチス支持者であることを明言していた。1970年代には、「ナイツ・オブ・クー・クラックス・クラン(KKKK)」の最高幹部として積極的に活動し、80年代にはKKKKを離れ、白人国粋主義者団体を創設している。
その後政界への転身を図るが、ルイジアナ州の州議会議員に当選したものの、下院議員、州知事、大統領選では、すべて落選している。2002年には詐欺罪で有罪となり1年間服役しており、欧州でもホロコーストを否定した疑いをもたれ、2009年にチェコで拘留されるなど、幾度もいざこざを起こしている(AP)。
◆自称「アメリカ・ファースト」の最初の提唱者。白人の権利を重視
最近起きた黒人男性による警官銃殺事件が、出馬を動機付けた理由の一つであるというデューク氏は、「この国の風潮が、私のほうに向いてきた」と述べる(AP)。同氏は、すべてのアメリカ人は平等で尊重されるべきとは考えるが、欧州系アメリカ人の権利と祖先から受け継いだものへのリスペクトも求めたいと主張。「何千もの利権団体が、アフリカ系、メキシコ系、ユダヤ系アメリカ人のために立ち上がっている」とし、欧州系アメリカ人には権利と祖先の遺産を守るため、上下院に少なくとも1人ずつは、自分のような存在が必要だと訴える(ニューヨーク・タイムズ紙、以下NYT)。
デューク氏は、共和党大統領候補のドナルド・トランプ氏が唱える「アメリカ・ファースト(アメリカ優先)」のスローガンについても、最初に広めたのは自分だとし、「公平な貿易なしで自由貿易はできず、アメリカ人の仕事やビジネスを守らなくてはならない」と述べる。「トランプ氏と多くのアメリカ人に、私が何年にも渡って訴えてきた問題のほとんどを分かってもらえたことに、大喜びしている。私のスローガンは、いまでも『アメリカ・ファースト』のままだ」と語っている。
◆共和党は全力でデューク氏を否定
デューク氏は、共和党員として登録しているが、同氏の上院選出馬の発表を受け、共和党関係者は続々と不支持を表明している。共和党全国委員長のラインス・プリーバス氏は、「党は彼の立候補をどんな状況下でも絶対に支持しない」と突き放した(AP)。
トランプ氏は、NBCの番組のインタビューで、民主党候補とデューク氏の戦いなら民主党候補に投票するかという質問に、候補者次第だが「そうする」と答えた(Washington Examiner紙)。実は3月にデューク氏がトランプ氏支持を表明した際に、トランプ氏がはっきりとデューク氏を否定しなかったことから、批判が噴出した。この失敗を踏まえ、今回は素早いアクションに出たようだ。トランプ陣営の広報官も同様に、トランプ氏は「デューク氏を否定しており、今後もそうだ」とすぐさまコメントを出したという(CNN)。
◆アメリカの現状では、泡沫と油断できない
1991年にルイジアナ州知事選でデューク氏に勝利したエドウィン・エドワード氏は、「国内にはかなり大きな人種的不安があり、彼がそれを利用するかもしれない」と述べ、デューク氏が「隙間」を掘り起こして当選する可能性もあると語っている。アフリカ系アメリカ人牧師のレイモンド・ジェットソン氏も、政界や国民がひどく分裂してしまった今、デューク氏が成功する可能性もあると述べる(AP)。
トランプ氏も最初は泡沫候補といわれたが、結局共和党の指名を獲得した。KKKの活動は「40年も前のこと」とうそぶくデューク氏が、トランプ氏と同じ「アメリカ・ファースト」を掲げ当選してしまう可能性は、決して低くないのかもしれない。